苦手力士克服法・ウルフ編

 ウルフこと千代の富士の平幕時代、苦手にしていた力士が琴風(現・年寄尾車)で、初顔から5連敗したのは有名な話。

そこから毎日のように琴風の佐渡ケ嶽部屋へ出稽古に訪ね、琴風が別の部屋へ行けば、そこへ行き胸を合わせた。

毎日毎日繰り返し、(琴風との)三番稽古に明け暮れた。

ついに6度目の対戦では初勝利を挙げ、それを機にその後はほとんど千代の富士が勝利した(通算で千代の富士の22勝6敗)

琴風戦の中でも出色の一番。

~ウルフ式・横綱になるには、居続けるには~

「負ければ、不安なんだよ。もう勝てないんじゃないかと思うぐらい追いつめられるんだよ。」
「負けた夜は食事に行っても気持ちはうわの空で、明日、勝てるのか。オレはこのまま終わってしまうんだろうか。そんなことばっかり頭の中をグルグル回ってるんだよ」

この相撲に対する意識・考えが通算勝利1045勝の礎だった。

「だから(稽古を)やるんだよ。やるしかないんだよ。不安を打ち消すには稽古しかない。自分を追い込んで納得するまでやる。そうすると、ここまでやったんだから負けるはずないって、思えるようになる。そこまでやらないと土俵には上がれない」

ぐうの音も出ない、出来そうで出来ないシンプルで完璧な理屈。

小錦に対しても同様。

1984年9月場所の初対戦では完敗している。当時不振が続いていた千代の富士は目が覚めたかのように、場所後に「小錦対策」として高砂部屋に出稽古を開始し、翌場所から対小錦戦で8連勝を記録した(通算でも20勝9敗)

これだけの稽古量で苦手力士の対策を体に擦りこませ、大胸筋や上腕三頭筋も鍛えることが出来ると言われる腕立てを1日500回。失敗や挫折から学んだ健康管理意識も高かったのだろう。

幕内優勝31回(歴代3位)、53連勝(昭和以降歴代3位)、角界初の国民栄誉賞を受賞した昭和最後の大横綱の積み重ねた努力、血と涙と汗の結晶は常人には想像もつかない段階だった。

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F1琴錦、新弟子集めの苦労と悲哀

 大相撲の新弟子の減少傾向が続いている。学校の卒業時期と重なる春場所は「就職場所」とも呼ばれ年6場所で最も入門者が多いとされるが、今回(今年春場所に)受検したのは34人。義務教育修了が受検資格に定着した1973年以降では2012年と並び最少だった。3代目若乃花、貴乃花による「若貴ブーム」で最多の160人を記録した92年から約30年。最盛期の4分の1以下にまで落ち込む事態に関係者たちも頭を悩ませている。(4月19日・日刊スポーツより)

資金力があって、(大学・高校)強豪相撲部関係者との有力なコネやツテ(柔道やレスリングなども含む)があり、そこから定期的に新弟子(志願者)を紹介・斡旋していただいたり、(外国人枠の問題もあるが)モンゴルを中心とした諸外国に太いパイプがあればいいが、そういったものがない・乏しいと、苦労が絶えないし、下手すると部屋運営に関わってくる問題に発展しかねない。

わんぱく相撲の全国大会(両国国技館開催)では、相撲協会が宿舎に各相撲部屋を割り当てられ、それをきっかけに・・・、なんてこともあるそうだが。

千葉県鎌ケ谷市に部屋を興して7年、元関脇・琴錦、朝日山親方の新弟子獲得への涙ぐましい奮闘ぶり・裏話をご紹介しようと思う。

朝日山部屋の力士数は現在8名。
(5月・夏場所番付)東三段目38枚目・悠錦(はるにしき)を筆頭に日々の稽古や出世争いにしのぎを削っている。

そんな中、親方は暇さえあれば最寄りの駅などで行き交う若者たちを観察しては声をかけて運動経験があるかどうか確認するという。ある時は焼肉店などで偶々近くのテーブルに座った体格の良い若者にも声をかけ、時には夜中にコンビニ前にたむろする若干柄の悪そうなグループに「仕事してるの?ブラブラしているならウチの部屋に来ないか」と勧誘を行うことがあるそうだ。

今の相撲界は元白鵬の宮城野部屋、元稀勢の里の二所ノ関部屋が新興勢力を伸ばす一方で、かねてからの名門・老舗の部屋も次々に土俵を沸かす力士を関取へと送り込んでいる。

朝日山部屋には大変失礼な言い方になるが、町を歩く体格の良い若者に声を掛け、一か八かの可能性にかけ、成りあがる未来・ロマンに賭する育成方法にも興味がある、面白い。

現在、相撲部屋の数は44を数える。
今日は一例として朝日山部屋を挙げたが、新弟子探しに同じような苦労をしている部屋は他にもあるはずだ。

将来を担える素晴らしい若者とのいい出会い・縁が各部屋平等に訪れることを祈りたい。

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忘れられない ヒョー、ショー、ジョウ!

 幕内最高優勝賞品・・・幕内優勝を達成した力士に贈呈される賜杯、賞状および副賞である。その数・規模は半端じゃない。現在では20種類以上の表彰に対し、時間も40分以上かかる。

各国の友好杯、地方自治体の賞、その他民間企業・団体から賞状・トロフィー・金一封などが主に授与される。

この千秋楽に行われる優勝表彰式。
私が子供の頃、楽しみにしていたある企業からの表彰。

「パンアメリカン航空賞」の授与である。

中でも忘れられないのが、この賞の授与・贈呈役だった。

パンアメリカン航空(パンナム)元極東地区広報担当支配人だった、デビッド・ジョーンズ氏によるあの読み上げである。

パンナムは1953年5月場所から幕内優勝力士に対して「パンアメリカン航空賞」を出していて、ジョーンズ氏を観戦に連れて行った前任者が表彰式での賞授与を担当していた。しかしこの方がパンナムを退職。会社はこれを機に賞の中止を決めたが、ジョーンズ氏が反対し、最終的に賞は存続されたが、存続を主張した当時の極東地域広報担当支配人だったジョーンズ氏が賞の授与を引き継ぐことになった経緯があるらしい。

こうして1961年5月場所から、賞の贈呈を担当することになった。賞の授与に臨んだ際に観客が式に退屈している様子を見てとると、あえて大声で「ヒョー・ショー・ジョウ!」と読み上げ、注目を浴びた。翌場所からは和装で登場、呼出しの力を借りず一人でトロフィーを持つなど、式を盛り上げた。地方場所では、現地の方言で表彰状を朗読したりと人気を博した。

1991年、体力の限界を感じたジョーンズ氏は引退の意向を相撲協会に伝えた。表明後、大阪で開催された3月場所では表彰状朗読後「みなさん、おおきに、さいなら」と方言で挨拶、最後の贈呈となった5月場所でも、旭富士への表彰の後、土俵上から観衆に別れを告げた。

2005年に、母国・アメリカで89歳でお亡くなりになったそうです。

ジョーンズさんによる表彰式って30年も続いたんですね。
あんなに楽しみに待ちわびていた優勝表彰式って、なかったよなと今でも時折思い出します。

動画は上から順に東京場所、九州(博多弁バージョン)です。

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木瀬部屋・古豪2人の昨今

 幕下15枚目以内。
十両への昇進を目指す者と十両下位の力士との間で、最も競争の厳しい地位。
関取(十両以上)と、力士養成員(幕下以下)との境目にあり、給料の有無に関わってくる。関取経験者も多く番付されており、人生模様と人間模様が複雑に交差する趣深い情緒ある番付・立場だ。

木瀬部屋のベテラン・元幕内力士2人がこの荒波の中で揉まれている。
一人は徳勝龍(西6枚目・36歳)※幕内優勝経験者
一人は明瀬山(西7枚目・37歳)である。

2人とも、5月夏場所で2勝5敗。関取復帰へまた遠ざかった位置に下がることになる。

30代後半になっても、プライド・過去の栄光をかなぐり捨てても土俵に上がり続け、輝きを取り戻してほしいと思う半面、年寄株は既に取得しているのか、取得する予定や計画、メドが立っているのかと引退後も継続して相撲人生が送ることができるのか、お節介な気持ちと勝手に取り越し苦労をしている自分がいる。

幕下15枚目以内(幕下上位)は、現実と夢と理想の交差点なのか。
今日もいろんな事を教えられ、メッセージをもらった気がする。

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翔猿ブラザーズ

 岩崎兄弟(翔猿と英乃海)の現在。

翔猿の実兄と知られる、英乃海(木瀬)は、今年5月の夏場所まで8場所連続十両。
弟の翔猿は(同じく5月場所まで)17場所連続幕内と、すっかり立場と伴う印象も逆転してしまった。英乃海はその5月場所で、東十両11枚目にて6勝9敗の負け越しに終わり、十両の座も首の皮一枚どうか・・・、というところまできている。

加えて弟とは、個性・キャラクターもだいぶ異なる。

しかし、相撲人(力士)としての経歴は決して引けを取らない。

兄弟共に埼玉栄高校・日本大学卒業。
兄は木瀬部屋(2012年5月)、弟は(2015年1月場所)に、兄と同じだと甘えが出ると追手風部屋に所属した。

2017年7月場所には、史上18組目の兄弟関取となる。また、別々の部屋に入門した兄弟による兄弟同時関取は、史上3組目の事例と脚光を浴びた。

2021年3月場所以降、同年11月場所まで5場所連続で幕内の番付を維持してきた岩崎兄弟だが、2022年1月場所(英乃海の)不祥事発覚により、1場所出場停止処分から立場と番付が完全に逆転。話題性に関しても随分差がついたように思う。

兄・英乃海は、新十両昇進時に伴う四股名として「木瀬ノ富士」という四股名も候補に挙がっていたとされる。
部屋の呼称に富士ですか…。活躍して聞きなれれば、ぴしゃっとはまったでしょうけどね。
どうなっていたことやら。

弟・翔猿は「独自路線」をひた走る。
「猿みたい」な動きで「他の力士がまねできない速い相撲を取りたい」と意気込みの通り、速い相撲に活路を見出している。

持ち味・タイプ・体格、兄弟2人の違いがあるようだがここはひとつ。
兄・英乃海により一層の奮起を期待して(促して)幕内でもう一度、兄弟で場所を土俵を盛り上げてほしいものだ。

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