「気合」と「意欲」の圧勝劇3番・名古屋場所初日

 名古屋場所初日を迎えた。
場所前から休場が決まっていたのは、午前11時台に当ブログに投稿した面々。
直後10~15分経ったあとだろうか、新大関・霧島の休場の一報が入ってきた。
衝撃度としては、腰が抜けるほどだった。いや、ホントに。
陸奥親方(先代・霧島)によれば、「1年ぐらい前から痛みがあったらしく、あばらとの間。痛み止めの注射を打てないところらしい。7日の夜に急に痛くなって寝られなかった」と説明した。
霧島本人は途中出場の意向を強く示しているそうだが、その思いが実るかどうかはわからない。

長い前置きになった。
となると、成績次第では大関昇進が成就する3関脇や天下の横綱・照ノ富士が2連覇成るかなどが大きな論点になるだろうが、初日の今日は筆者目線で見渡してきて「気合」と「意欲」が強く伝わってきた厳選3番をお伝えしようと思う。

①碧山・伯桜鵬戦

プロ入りわずか4場所目、今場所から本名の落合改め伯桜鵬の新入幕初日。
今場所も左肩周辺には痛々しいテーピングが幅広く施されている。
立ち合い低く当たった伯桜鵬は碧山の頭頚部付近への突っ張りを執拗に浴びるが、じっとこらえながら、腰を落とし反撃の機を窺う。伯桜鵬寄りながら左を差し、寄り切った。

伯桜鵬の闘志みなぎる素晴らしい一番だった。
数々のアマチュアタイトルを制するも、まだ19歳。本人も今場所12勝を目標と公言していたから、今後の可能性は天井知らずか。

②豪ノ山・琴勝峰戦

先場所十両優勝、文句なしで迎えた新入幕・豪ノ山の初日。
対戦相手は先場所途中休場、膝の具合はよくなったか。6月には婚約を発表した琴勝峰。
低い立ち合いの豪ノ山。左にいなしたあと積極的な突き押しを見せ、琴勝峰が後退。
そのまま腰を落とした姿勢で手堅く押し出した。

場所前に「どんどん出る押し相撲でいきたい」と力強い抱負を語った通り、新入幕で迎えた今場所も何かをやってくれるのではと思わせてくれた今日の相撲だった。

③正代・大栄翔戦

大関候補3人の一角、大栄翔は、元大関の正代との初日で大事な場所の船出となる。
立ち合いから激しい突っ張りの大栄翔、距離を潰し四つ相撲に持ち込もうとする正代を更に突き放す。腕がよく伸び確実に正代を後退させ押し出して大栄翔。

場所前の会見で大栄翔は「意識してやらないと上がれない地位。気持ちを強く持って自分の力を100%出せるようにしたい」と語り更に「(負けた相撲の)ほとんどが土俵際での逆転負け。今はそこを修正できるようになってきた」と前向きに語った。

他にも、同じく大関候補の若元春がスピード溢れる素晴らしい相撲で御嶽海に圧勝。

横綱・照ノ富士の初日も、小結に返り咲いた阿炎にほぼ何もさせずに完勝。上々の滑り出しを見せた。




初日から休場の主な面々

東大関
貴景勝(常盤山部屋)
・やはり、出場に値する膝の状態ではなかったんですね。先場所もギリギリの様子だったのは、画面越しに伝わってきましたから。ゆっくりと療養に時間をあててほしいです。
西前頭12枚目
若隆景(荒汐部屋)
・当時発表された病名と全治までの期間からまだまだ時間を要するものだと思います。寂しいですが。
東十両6枚目
藤青雲(藤島部屋)
・この知らせにはびっくりしました。先場所、新十両として活躍。今場所も期待していたのですが、6月16日に負傷したとのことで稽古中に痛めたのでしょうか。

~幕下以下でも~

西幕下筆頭
炎鵬(宮城野部屋)
・先場所途中から、テーピングを施してかなり痛々しかったです。首の痛みですからね。(きつい言い方になりますが)同部屋で同じように小兵だった石浦のように相撲人生を断たれることのないように祈るばかりです。
西幕下5枚目
千代の国(九重部屋)
・本当にケガの多い力士ですね。ヒザを痛めてるとのこと。できる限り治して、また不屈の闘志で這い上がってほしいです。

~番外編~

NHK解説者北の富士勝昭さん
・今場所も解説をお休みするそうです。3場所連続になりますか。
「プライバシーに関することなので、お答えしかねます」とのNHK側の答えとか。
残念です、寂しい限りです。

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掴み取れ、関取の座! 木竜皇

 今場所西幕下2枚目・木竜皇 博一(きりゅうこう ひろかず・立浪)

父は元幕内・時津海。先代(16代)時津風である。
弟は同じ立浪部屋所属の春雷(西三段目37枚目)

先場所、西26枚目で幕下優勝を果たした木竜皇が関取へリーチとも言えるこの番付(西幕下2枚目)まで登り詰めてきた。これまでのヒストリーを振り返る。

2002年10月31日、東京都墨田区生まれ。
両国小学校1年から相撲を始め、2年と4年時に白鵬杯で優勝、5年時にわんぱく相撲全国大会2位の実績を残した。
中学(千葉県柏市立柏第二中)3年時にも全国大会で団体優勝を経験。
高校は相撲の名門・青森県立三本木農業高校へと進み、相撲部主将を務める。

~時津風部屋入門予定が~

高校卒業後は父が師匠の時津風部屋に入門する予定が、皮肉にも父の時津海こと当時の時津風親方の不祥事が原因で木竜皇が高校を卒業する直前に父・時津風が相撲協会を退職。
この事態を受けて時津風部屋に入門するか再考した結果、立浪部屋に入門先を変更した。
2021年5月場所で初土俵を3歳年下の弟・正真(四股名:春雷)とともに立浪部屋に入門。兄弟で入門同期ということになる。

        弟・春雷

出世は早かった。
幕下中位まで7場所連続勝ち越し、そのあと2回負け越しを記録するも、先場所の幕下優勝で再び躍進。関取昇進へ向けて大勝負となる場所となった。

木竜皇 博一 入門時にはその時の流れで運命に弄ばれたが、立浪部屋で関取到達まであと一歩というところまで上がってきた。
先場所幕下優勝時の人柄の良さが伝わってきたインタビューは目と耳に焼き付いて離れない。

明日(初日)に十両経験者・栃武蔵(春日野)との一番が組まれている。
サバイバルの始まりだ。

一気に決めようぜ、木竜皇!!



ダークホースと言わせない

 錦木と明生。

この両雄、今場所の番付が

錦木・・・東前頭筆頭
明生・・・西前頭三枚目 である。

錦木は今年に入り幕内上位に定着。
先場所は8日目から怒涛の8連勝を記録した。
対戦者も8日目から順に(若元春・貴景勝・御嶽海・北勝富士・琴ノ若・正代・阿炎・阿武咲)と実力派・大物を立て続けに連破。9勝6敗とし、自己最高位の東筆頭に躍り出た。

明生は元々2021年7月場所から4場所連続三役を務めた実力者。
その後、腰痛やコロナ感染、今年に入ってからは2場所連続5勝10敗と番付を落としたが、迎えた夏場所は、初日から7連勝と破竹の勢いに乗る。中日に初黒星を喫したが、9日目に横綱・照ノ富士を破る初金星を上げた。最後は尻すぼみになるも、8勝7敗で初の殊勲賞に輝く。

今場所の幕内、話題の焦点は、3関脇の行方(大関獲り)につながる成績を上げられるか、(新大関)霧島や朝乃山の活躍、金峰山や北青鵬、新入幕の豪ノ山と伯桜鵬といった新世代組の台頭なるかが大半を占めるか。

いや、中卒で角界入り。荒波に揉まれることを決意して入門したこの2人が、話題の新鋭たちに容易に世間の追い風と肩書きを明け渡すことなく、逆に壁となって相撲道を教え、障壁となり立ちはだかってほしい。見せつけてやれ、地力と底力を!


新大関の部屋で、異彩を放つ3力士

新大関霧島(旧四股名・霧馬山)誕生に湧き、意気上がる陸奥部屋。

またその裏側には、幕下以下(正確に言うと三段目以下)に昭和生まれの3力士が所属していて、来たる名古屋場所に備えている。

西三段目56枚目 鋼(はがね)     昭和56年8月29日生(41歳)
東序二段92枚目 霧桜(きりざくら)  昭和58年5月26日生(40歳)
西序ノ口筆頭   霧丸(きりまる)   昭和60年4月5日生 (38歳)

鋼は2000年3月場所に井筒部屋から初土俵。
愛知県刈谷市出身のご当所力士。
一時期、井筒部屋の代々に伝わる四股名「鶴嶺山(かくれいざん)」を名乗っていた時期がある。期待が大きかったのだろう。
最高位は東幕下16枚目。幕下を離れて7年が経つ。

霧桜は1999年3月場所に初土俵。
鋼よりも力士歴は1年多く上である。最高位・西三段目69枚目。
鹿児島県霧島市出身。
陸奥部屋の力士になることは運命だったのか。
序二段在位114場所目。
100㎏満たない体重で(現在95㎏)奮闘を続ける40歳だ。

最後に霧丸は、2001年3月場所初土俵。
愛知県名古屋市名東区出身のこちらもご当所力士。
中卒での角界入り、たたき上げ。東序二段20枚目の最高位。
今年序ノ口2場所目。身長171cm・体重152㎏
今年の力士名鑑には、ちゃんこ長。ファン感謝祭のちゃんこぐらんぷりで優勝とあった。

以上が、陸奥・昭和世代3力士の現在地である。
支えているのは相撲愛か。
40歳前後で現状のこの番付、「関取」「給料」の2つの言葉を見据えるのは厳しく難しいか。

新大関誕生に話題が集まる中、この3力士も奥深い存在感を放っている。