栃ノ心に幸あれ!

 ジョージア出身の元大関・栃ノ心(春日野)が残念にも引退してしまった。
今年初場所にケガした左肩脱臼の影響がその後にも響いたようだある。

5月場所は初日から精彩を欠く5連敗で
「ダメだった。残念ながら。相撲になっていない。場所前は、こんな結果になるとは思わなかった」
「1月場所でケガして、そこから自分の相撲が取れなくなった。今場所も乗り越えられると信じていたけど、自分の相撲を取れず、力も出なくなった。相撲を取るのが怖くなりました」
などと語り、6日目に引退届を提出した。

栃ノ心。
振り返ってみると、四股名にある通り「心」を大切にしていた力士だったように思う。
※自らの不祥事、膝の大けがによる番付陥落、紆余曲折・苦労があって身に染みた部分も大きいと思う。

四股名の由来は、「お前は外国人力士だから日本人力士より尚更『心・技・体』の『心』を大事にしなきゃな」という師匠の考えがあったとか。

栃ノ心より約1年早く入門した兄弟子、元関脇・栃煌山の清見潟親方は、入門当時の言葉がわからない栃ノ心を「ニコニコして部屋の仕事も一緒にやっていました。人がいいからこそ、なじむのも早かった」と振り返る。更に「(相撲の)センスは抜群ですし、やればやっただけ、吸収して毎日強くなっていきました。栃ノ心の性格はやさしくて素直。そういうのも良かったと思います」と回想した。

幕内優勝を1回記録している。
優勝を決めた2018年初場所14日目の松鳳山戦である。

この場所を機に3場所後の同年7月場所に大関に登り詰めた。

そうそう。
大関昇進時の口上も印象的。
「親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進」
四字熟語や型にはまった言い方でもない、シンプルで素朴な言い回しが耳に残ったな。

(栃ノ心の)相撲人生に話を戻す。
怪我による番付(立場)の浮き沈み、それを乗り越えたことによって(力士・人間としての)強さ・厚みが増し、多数のファンからの支持を受けることができたのか。引退を決意して相撲界に残らないのか、残れないのかはわからないが(実績と人柄から)快く相撲界から送り出してもらえたのではないかと思う。

週刊誌報道によると、母国・ジョージアで父親のためにワインを生産するブドウ農場を作ろうとしているという話もあれば、祖国で歯科技工士の資格を取得しているなんて話も。

日本人よりも日本人らしいかもしれない。
どの道を進むにしても、私は応援する。

最後に同郷の親友、元小結・臥牙丸からの引退に寄せてのメッセージと、引退を決めた日の栃ノ心本人からの報告です。

17年間の土俵生活、本当にお疲れ様でした。

栃ノ心さん、お疲れ様でした↓↓↓


順調な調整、本気の豪ノ山!!

 豪ノ山 登輝(ごうのやま とうき・武隈)
先場所14勝1敗で十両優勝、しかも1敗同士で迎えた優勝決定戦であの落合(来場所から)伯桜鵬(はくおうほうに改名)に一方的に圧倒して優勝を成し遂げた。
※ちなみに、十両での14勝1敗同士での優勝決定戦は史上初だそうです。

その新入幕を確実にしている豪ノ山。
来たるべき7月・名古屋場所に向けて、順調な調整を続けているようである。

豪ノ山が13日、所属する都内の武隈部屋で、出稽古に訪れた幕内・王鵬(大嶽)と三番稽古を行った。夏場所では幕内で11勝した実力者を相手に、持ち前の馬力で圧倒して15戦全勝。「幕内力士に自分の相撲で勝てるのは自信になる」と手応え十分だった。(スポニチより)

これ、凄いですね。
先場所、あの落合を相手に決定戦で圧勝。
この日の王鵬相手に出稽古とは言え、15戦負けなし。
(いい意味での)幕内でやっていく自信がついたようですね、先場所の実績と合わせて。

成績・数字で追いかけていくと、3月(春場所)あたりから何かを掴んだか。

先場所、全般的によく見せた強い当たり(立ち合い)から一気に決める相撲(主に)突き押しが磨かれ、幕内の強者達に挑む。

豪ノ山関の色紙です↓↓↓


新しい歴史へ向けて、湊部屋

 夏場所10日前の5月4日、相撲界にかなりの激震が走った。
幕内優勝経験者、最高位・関脇(在位8場所)「モンゴルの怪物」こと逸ノ城(湊部屋)が突然引退したのだ。慢性化していた腰痛を引退の理由としていたが、3月の春場所で十両優勝を成し遂げ、夏場所の新番付にも、西前頭13枚目に名を連ねていた矢先の出来事だったので、腑に落ちない・不信感が極まった。

湊部屋は、埼玉県川口市にある。先代の元小結・豊山が創設した(1982年当時)戦後初となる埼玉県に創設された部屋である。

部屋頭・看板人気力士(逸ノ城)を失い力士数9人となった。
その面々のご紹介。少しのエピソード付きで。

(夏場所の番付順で)
東三段目筆頭 諒兎馬 龍(あきとば りょう)
中学卒業後に入門。スポーツ経験はなく、部活は囲碁将棋部に所属していたという変わり種。
四股名は、元幕内の若兎馬から頂戴したそうだ。
2年前に右膝の大ケガを負った。手術を受け番付を大きく下げたが、復帰して稽古に精進し這い上がった。元関脇琴錦(朝日山親方)のような一気に前に出る相撲を理想と掲げる。
最高位 東幕下27枚目

東三段目41枚目 鷹翔 光司(おうか こうじ)
高校(児玉白楊高)で柔道経験後、角界入り。土俵歴12年。休場歴がここまでない。
最高位 東三段目4枚目

西三段目67枚目 榛湊 貴浩(はるみなと たかひろ)
小学3年の頃から相撲を始めた。兄が同部屋の夏野登岩(かやといわ)と中学の同級生という縁で誘われて湊部屋へ入門。
最高位 西幕下36枚目 

西序二段8枚目 夏野登岩 大門(かやといわ だいもん)
初土俵から長年「濵湊」の四股名を名乗っていたが、2018年3月場所より現在の四股名へ。本名は濵名 夏野登
最高位 西三段目27枚目

西序二段9枚目 福湊 龍二(ふくみなと りゅうじ)
諒兎馬同様、スポーツ経験も無かったそうだが、勉強嫌いで身体が大きいことを理由に、力士の道を志したそうだ。
最高位 西三段目78枚目

東序二段29枚目 煌星 朱(こうせい あきら)
高校を中退して角界入門。本名の下の名前を四股名につけている。
番付に名前が載ってからの3場所負け越しなし。
最高位 東序二段29枚目

西序二段30枚目 昂輝 拓実(こうき たくみ)
中学の頃から相撲を始めて、3年次に県大会2位になり全国大会に出場。
湊部屋の名古屋場所宿舎が実家近くにあったことが入門の決め手。
去年三段目中位まで上がるも、現在は序二段に在位。
最高位 東三段目53枚目

東序二段55枚目 名島 和希(なじま かずき)
中学卒業後角界入り。
80.2㎏の体重で奮闘している。
最高位 東序二段55枚目

西序二段91枚目 艶郷 剛志(つやさと つよし)
柔道は初段の腕前。相撲は中学2年の頃から始めて、中3で関東大会団体戦に出場。
最高位 東序二段31枚目
先場所(3月)この最高位で7戦全敗を喫してしまった。

関取を見据えた上でこれといった有望株は現状いないようだが、この9人で切磋琢磨しあって、新しい湊部屋の輝かしい歴史を作ってほしいものだ。

変わらず応援しています↓↓↓


手計家の人々

 現在3人の関取が所属する佐渡ヶ嶽部屋の一角・琴勝峰(本名・手計富士紀(としき))は、小学1年で相撲を始め、入門してから6年近く経った今では、幕内上位に顔を出すようになった。

4歳年下の弟がいる。同部屋・幕下の琴手計(ことてばかり)である。
こちらは5歳の時から相撲を始め、アマチュアで優秀な成績を上げ、力士経験2年足らずで現在幕下で活躍中。

今日はこの手計兄弟とご両親を含めた「手計家」を紹介する。

まずは兄・琴勝峰。
埼玉栄高校へ進学し、同級生には納谷(現・王鵬)と塚原(春日野・幕下)がいた。
アマチュア時代、団体戦では実績を残したが、個人戦では優勝経験が無いとのこと。
現・琴ノ若が柏市相撲スポーツ少年団の先輩にあたり、小学生時代から部屋に誘われていたことから高校3年の在学中に、佐渡ヶ嶽部屋に入門(2017年11月場所)
幕下には(初土俵を含めて)所要6場所での到達。
そこから十両へは、その翌年(2019年)の九州場所と順調に歩を進めた。
その十両を3場所で通過。幕内へ上がるが、2021年初場所2勝13敗、翌春場所には右足のケガで途中休場するなどして、十両陥落。
再起し、十両優勝を確実な実績に再入幕後(2022年春場所)現在に至る。

突き押し、四つ相撲のどちらかに絞ることは考えず、「押しても組んでも、自分から攻めていきたい。その時の流れを大事にしたい。両方を磨いていけたら」と”二刀流”を宣言し、上位を目論む。

続いて、弟・琴手計。
去年初場所初土俵後、3月・5月と序ノ口・序二段優勝、三段目を2場所で通過。
幕下に至っても、今年3月(春場所)は3勝4敗と負け越したものの、今場所(5月)は東23枚目で4勝3敗だった。右四つ・寄りが得意の19歳である。

さて、今度はご両親。
母親は韓国出身の方だそうである。なので、琴勝峰・琴手計兄弟は日本と韓国のハーフになる。

そして父親は、元ボディビルダーだそうです。
2017年の千葉県の大会では上位に入賞したこともあるとか。

このご両親2人で、千葉県柏市(柏駅近くで)居酒屋を経営されてるそうです。
「達麿(だるま)」という店名で、毎日地元の市場から新鮮な魚介類を入荷した料理が美味しいとの評判で、創業50年以上も続いている柏界隈でも有名な居酒屋だとわかりました。

https://tabelog.com/chiba/A1203/A120301/12016384/

本題に戻る。
琴勝峰(23歳)、琴手計(19歳)と前途は洋々だ。
角界の看板にもなり得る可能性を秘めた2人には、質量ともに十分な稽古と経験を積み重ね、自信と実力を養ってほしい。次代のホープなのだから。

噂の力士 翔猿と宇良

勝っても負けても元気をくれる。
どんな技を繰り出すのかわからない。
相撲が楽しい。

この言葉があてはまる現役幕内力士と言ったら、翔猿と宇良か。

夏場所の相撲から(2人の直接対決を含む)持ち味の出た取組を3番集めてみた。

まずは
5日目・翔猿-貴景勝

激しい突っ張り合いから、翔猿が左差し右上手投げ・外掛け・掛け投げの要領で、翔猿は上手投げ、貴景勝すくい投げの打ち合いになったが、貴景勝に軍配。物言いがついたが「貴景勝の体が先に落ちていて」軍配差し違えで翔猿の勝ち。
土俵際の投げの打ち合いで、翔猿は土俵下へぐるりと一回転。前日(4日目)照ノ富士戦で痛めた右肩に施したテーピングもちぎれていたが、肩で息をしながら勝ち名乗りを受けた。

11日目・宇良-錦富士

錦富士、立ち合いから左差し一気に寄る。堪える宇良、左四つがっぷりに持ち込む!
錦富士が仕掛け、出し投げを連発して宇良を崩して寄る。土俵際で宇良が捨て身のとったりが決まった。腰をくねらせながら宇良は曲芸(アクロバット)を見せてくれた。

12日目・翔猿-宇良(両者の直接対決)

両者しばしの(変化を交えて)突き合い。翔猿いなすも局面変わらず。
両雄見合う中、宇良が低い姿勢になって相手の胸に頭をつけ、反るようにしてひねり倒した。
25年ぶり決まり手の「ずぶねり」さく裂!言わば曲芸師同士の対決は宇良に軍配!

(番外編 今年初場所9日目・宇良-錦富士)

https://www.youtube.com/watch?v=ORQ0wxCgAoE

この一番も記憶に新しく、かき消されることはない。
見よ、宇良のまるで何かを念じるかのような手の動きを。

身長175cm程度、体重130~140㎏ぐらいで幕内上位で活躍することはこのぐらいしないと通用しない・生きていけないと体現してくれているのか。

(相撲の)スピード
技の種類・(繰り出す)タイミングをもってのキレ
勝敗直後のパフォーマンス

翔猿と宇良、年齢・身長・体重に関わらずに行われる無差別で戦う相撲の奥深さを具現してくれる2力士である。

翔猿関と一緒に体操を↓↓↓