あたみんとひふみん(熱海富士と加藤一二三)

 今年初場所を3勝8敗4休の成績で終えた伊勢ヶ濱部屋の人気者・熱海富士。

11日目からの休場理由は、インフルエンザ感染によるもの。相撲人生初の休場となってしまった。

大分日が経ったから、通常の生活を送れてるだろう。稽古は再開できたかな。

角界入りしてからのここまでを振り返る。

2021年1月・3月場所を、序ノ口・序二段優勝とこれ以上ないスタートを切った。

各段優勝インタビューで、その笑顔と素朴な人柄、語り口がいいキャラクターだなとすぐに焼きついた。

初土俵から所要8場所で関取昇進、その新十両の場所で7勝8敗と負け越すも、十両も4場所で通過。2022年11月場所で新入幕。幕内の壁は厚く4勝11敗で終わり、出直しとなった。

まだ、20歳と伸び代十分。得意の右四つに磨きをかけ、隆盛極める伊勢ヶ濱勢の一角に食い込んでほしい。

Wikipediaによると、妹の陽奈(ひな)は、熱海富士の母校、飛龍高等学校に在学し、2022年秋から、同相撲部初となる女性主将に就任。普段は、男子部員に交じって稽古に励み、去年4月には国際女子相撲選抜大会・軽量級3位に輝いたそうだ。女子相撲の怪物ここにあり!

かわってこちらは、「将棋界の異端児」「神武以来の天才」「1分将棋の神様」の異名を持つ、将棋棋士であり、タレントとしても活躍している加藤一二三。

将棋界では、名人位を獲得した実績があるほどの超一流棋士。
名人=(相撲界)で言う横綱である。

今でいう、藤井聡太的な存在だったのだ。

最年少記録だけでも
史上最年少プロ棋士
最年少勝利・最年少敗北
最年少A級昇級
タイトル戦最年少記録
などがある(まだまだあるかもしれない)

2013年頃から、バラエティー番組に進出。
フジテレビ系「アウトXデラックス」に出演。
「ひふみん」と呼ばれ、一躍、お茶の間の人気者になった。

「あたみん」と「ひふみん」、偶然にもひらがな4文字の愛されキャラの二人を、これからも応援せずにいられないと思った。

白鵬断髪式・引退相撲に三女から愛情たっぷりメッセージ

先日の1月28日に「白鵬引退宮城野襲名披露大相撲」(白鵬断髪式)が開催された。

オープニングセレモニーでは市川團十郎の歌舞伎演目に場内からどよめきが起こる斬新な演出。

断髪式の参加者も、元首相の森喜朗氏や鳩山由紀夫氏、トヨタ自動車社長の豊田章男氏、プロ野球読売巨人軍・原辰徳監督、芸能界から松山千春、吉幾三、YOSHIKI、GACKT、デーモン閣下、関口メンディー、東山紀之、スティーブン・セガールなど類を見ない豪華な顔ぶれ。

中でもほっこりして涙を誘われる場面が、断髪直後の家族とのふれあい。
愛娘、三女・眞結羽(まゆは)ちゃんの愛情たっぷりのメッセージが読み上げられた場面。

当初は書き上げた手紙を読む予定だったそうだが、しっかりと暗記。
最後には大観衆へのお礼の言葉を述べ、会場から温かい拍手が起きた。

こんな可愛らしい演出をされたら、白鵬(親方)もたまらないだろう。デレデレといった感じ。

さぁ、新たな旅立ちだ。

北青鵬と炎鵬の関取勢に、来場所は所要1場所で新十両を決めた落合、幕下上位には川副、向中野とアマチュア相撲で抜群の実績を出したホープ達が次々と控えている。

宮城野新時代の幕は上がったばかりだ。

栄光と挫折を知る2人が春場所を迎え撃つ

 大相撲春場所の十両昇進力士は4人。

新十両は玉正鳳(29=片男波)と落合(19=宮城野)の2人。

再十両は友風(28=二所ノ関)と徳勝龍(36=木瀬)のこちらも2人と発表された。

新十両の2人は、玉正鳳=玉鷲の義弟、落合=史上初の幕下付出から所要1場所で十両昇進、現宮城野親方(元横綱・白鵬)がスカウトと共に話題性があるが、再十両組も負けてはいない。

まずは、徳勝龍。
幕下転落後、わずか1場所での関取復帰となったが、記録が伴っている。
①史上3人目の幕内最高優勝経験者からの復帰。
②戦後4番目の年長再十両。
という快挙である。

明徳義塾高校から近畿大学を経て、2009年1月場所初土俵。同期には、宝富士・貴ノ岩・皇風といった錚々たる顔ぶれ(花のロクイチ組・昭和61年度生まれの関取となった総称)

2011年11月場所新十両、2013年7月場所新入幕、幕内の壁に跳ね返されることもあったが、這い上がった。

2020年1月場所、4場所ぶりに返り咲いた幕内で、なんとあの貴闘力以来20年ぶりに幕尻優勝を14勝1敗の好成績で成し遂げる。

突き押しが多い取り口だが、優勝を決めた一番は堂々と四つに渡り合った。

優勝インタビューも話題になった。

翌2020年3月場所には、自己最高位・西前頭2枚目まで上り詰めるも、4勝11敗と大きく負け越し、2021年11月場所から7場所連続十両も負けが込み、幕下に転落し、現役続行も危ぶまれたが、わずか1場所での関取復帰は、高齢記録のおまけ付きだった。

36歳7ヶ月で迎える3月場所は、一層の円熟味を増した相撲を見せてくれるのであろうか。

そしてもう一人、友風。

現在では二所ノ関部屋所属だが、「風」=停年前の尾車部屋に所属していた力士だ。

大卒からプロ入り。
ここまで、わずか6年足らずの土俵生活だが、力士人生は波乱万丈だった。

序ノ口デビューから、8場所で新十両を決めると、その場所でいきなりの十両優勝。十両も2場所で通過。

入幕後、3場所目となる2019年9月場所には西7枚目で11勝4敗で殊勲賞を獲得。当時の横綱・鶴竜を下し、金星も記録している。翌9月場所にも鶴竜に勝って、2場所連続の金星を挙げた。

ここまで順風満帆できたと言える土俵生活が、暗転するのは2019年11月場所2日目・琴勇輝戦だった。



土俵下に転落した際に右膝を痛め、外側側副靭帯・前十字靭帯・後十字靭帯・ハムストリングの断裂、半月板損傷、大腿骨と脛骨の骨折と判明。右膝から下は皮膚、内側側副靭帯と血管1本だけが繋がっているような状態だった。
医師からは「復帰どころか歩けるまで回復できれば良い方」とまで通告を受けるほどの重症だったが、同じように現役時代ひざの大ケガで幕下から大関まで這い上がった当時の師匠(元大関琴風)からは「心も相撲も入れ替えろ。みんなケガをして這い上がってくる。やっとプロになったんだよ」と以前から押し相撲からの引き技を持ち味とする取り口を危惧しつつも、同じ苦しみを味わった者にしかわからない深みのある暖かい言葉をかけ、母親や周囲の人達からの励ましもあり、再起を決意。計4回の手術にも耐えた。

本場所を1年以上休場、土俵復帰は2021年3月場所。番付は西序二段55枚目まで落ちていた。土俵に上がることの恐怖心があったそうだが、この場所を6勝1敗で終えた。

その後も着々と勝ち越しを重ね、2022年1月場所では東幕下15枚目まで番付を戻し、十両復帰を射程圏内に捉えた。1年後の今年初場所、東2枚目で4勝3敗と勝ち越し、場所後の番付編成会議で、悲願の再十両昇進が正式に発表された。

栄光と挫折を味わった徳勝龍と友風。
相撲の力量以外にも、どん底から這い上がった精神力や人間力を見せつけてくるような怖い存在になりそうである。

湘南乃海、大活躍に至る超人伝説。

先日、大関・貴景勝の3度目の優勝で幕を閉じた初場所を、新十両として12勝3敗の好成績で終えた。

NHKの中入りの時間でも5日目に取り上げられている。

その名は・・・、

湘南乃海 桃太郎(高田川部屋)

とにかく初場所の活躍はスゴかった。

3敗の内訳が、2日目・對馬洋、6日目・豪ノ山、12日目・朝乃山のみ。

193㎝・186㎏の体格を武器に、関取昇格まで9年を要した苦労を爆発させるかのように、白星を量産させた源はどこにあるのか、今日はその理由と経歴に焦点を当てようと思う。

1998年4月8日、神奈川県中郡大磯町に産湯を使った湘南乃海こと谷松将人。
父親が野球の指導者をしていたこともあって、小学生時代から野球クラブチームに入り、

小6時には189㎝・100㎏と高校生と間違えられるほど規格外。ちなみにランドセルは小学2年で卒業!

体格・見た目だけでも、あのメジャーリーガー・大谷翔平の小学校時代の上をいく数値だ。大谷翔平、小6時身長167㎝・体重60㎏(推定)

中学校に入ってからも野球を続けてきたが、ケガが多く諦めかけていた時、ドラマ「千代の富士物語」を見たことで興味がわき、身近に相撲関係者がいたこともあり、朝稽古などを見学に行くようになった。この事が湘南乃海の人生を大きく変えることになる。

中学卒業と同時に、元関脇・安芸乃島の高田川部屋に入門(2014年3月)
体格と比例して、出世街道も順調にいくかと思いきや、現実はそう甘くなかった。

幕下昇進まで、2年半の歳月を要した(2016年11月)

そこから十両(関取昇進)まで6年。
幕下上位(15枚目以内)でよく聞く名前、番付運・巡り合わせもあるだろうが、ここぞという場面で勝ちきれず、関取昇進を逃していたような気がしてならない。
「折れそうな時が何回もあったけど、我慢を学んだ。何事も我慢なんだなと思いました」
と湘南乃海は話したそうだ。

迎えた今年初場所。
2日目の對馬洋戦に、わずかな差で敗れるも、序盤戦を4勝1敗と上々のスタート。6日目・豪ノ山戦に押し出しされて2敗。翌7日目から5連勝で、

12日目・元大関・朝乃山と対決。立ち合い、湘南乃海が右上手を取るが、左から下手投げを打って崩す朝乃山。左をこじ入れて巻き替えを図る湘南乃海だったが、そこを一気に寄り切って朝乃山が勝ったが、新十両は元大関に十分に渡り合ったように見えた。

13日目以降、幕内経験者の大翔鵬と炎鵬、優勝争いをしていた金峰山を撃破。12勝3敗、優勝次点という文句なしの成績を残した。

東13枚目での12番(勝ち越し9)というと、単純計算で来場所は、十両4枚目辺りか。

湘南乃海(大磯)から中学卒業と同時に15歳で角界入り、血と涙と汗と砂にまみれながら、「関取」という名の花が咲くまで、9年もの時間を必要とした。
来場所は、幕内という更なる大海原に向け、帆を上げる。

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最後に笑った貴景勝V3、感動インタビューと一緒に・千秋楽

今日は幕内最高優勝の行方から。

結びに組まれた、貴景勝‐琴勝峰戦。
一人、最高位の重圧に耐えていた大関と、東13枚目から平幕優勝を狙う構図だ。
立ち合いぶちかましていく貴景勝、左を深く差して琴勝峰の右が浮く感じに。
容赦なくすくい投げ!鮮やかに決まり、貴景勝3回目の優勝!終盤で連敗するも、最後は大関の意地を見せた。

気迫あふれる、琴勝峰との優勝を決めた一番もよかったが、そのあとのインタビューも素晴らしかった。「感謝」「謙虚」という言葉を織り込み、周囲の人たちへの配慮も忘れなかった。

今場所一時は優勝争いトップに立つなど、大いに場所を盛り上げてくれた一人、阿武咲は関脇・豊昇龍との千秋楽。立ち合いから豊昇龍を押し込み、一気に勝負を決めにかかる阿武咲。その反動をつけ引き落としで、勝負がついたように見えたが物言いがつく。協議の結果、阿武咲が豊昇龍のマゲを掴んでいて、「反則」で豊昇龍の勝ち。阿武咲は3連敗で10勝5敗で初場所を締めくくった。豊昇龍は足の痛みで1日休むも、8勝7敗で来場所につなげた、立派!

初の技能賞獲得が決まった霧馬山、千秋楽・竜電にも勝って、有終の美を飾りたいところ。
少し左に変化気味の霧馬山、左上手を取り、竜電を半身にさせる。右前みつも引く。左巻き替えて、竜電の上手を切る。出し投げで崩して寄り切った。1分23秒の長い相撲(この相撲に限って言えば)頭をつけて竜電との距離を置き、巻き替えて廻しを切り、出し投げを利用して寄り切るあたり、「技能賞」に相応しい相撲に見えた。来場所も中心力士の一角を担う存在となりそうだ。

~これより十両~

14日目に優勝を決めた朝乃山以外にスポットを当てる。

金峰山に新十両・湘南乃海の3敗同士の楽しみな一番。
のど輪で攻める金峰山、湘南乃海も負けじと押し返す。いなし(叩き)にも落ちない金峰山、左が入った湘南乃海、腰を落とししっかりと寄り切った。
湘南乃海12勝3敗、金峰山11勝4敗。両者とも目覚ましい活躍だった。

3敗力士もう一人、6日目からの7連勝などで11勝3敗で千秋楽を迎えた大翔鵬。
対するは5場所ぶりの再十両で9勝を挙げている白鷹山。
両者激しい突っ張り、大翔鵬左上手切られ、白鷹山ののど輪をいなし気味に突き落とし。
大翔鵬も優勝次点となる12勝3敗で初場所を終えた。

※十両2番目の取組、東幕下筆頭の玉正鳳は、西十両10枚目の照強(伊勢ヶ濱)にはたき込みで勝ち、念願の十両昇進をほぼ確実なものとした。

~15日間を終えて~

貴景勝、3度目の優勝で幕を閉じた初場所。
本人にしかわからない相当なプレッシャー・重圧の中で、最終的に優勝を勝ち得たことに関しては、十分な評価に値する。ただ、本人が更に上(横綱)に目標・照準を置いていたら、見方は厳しいものに変わってくる。綱取りとなれば、来場所は1敗以内の成績・優勝を収めなければ周囲は納得しない。

霧馬山、今年は一層の飛躍があるかもしれない。相撲に幅が広がってきているように見える。

大波兄弟もよくやった。若元春は終盤3連勝で9勝にのせたあたり地力がついた証拠か。
若隆景は6場所連続関脇として勝ち越しているが、大関を目指すなら、(欲を言えば)もう少し体重増量・それに伴うパワー・勝ち急ぐようなところを感じるので、相手の動きをじっくり見る目も養ってほしい(臨機応変さ)

来場所も楽しみである。
照ノ富士は帰って来るのかな、まだ難しいか。