ウルトラよ、ミラクルを起こせ!

 現在の師匠・元幕内北桜が継承してから、珍名力士と話題性に富む式秀部屋。

現役珍名力士の数々・爆羅騎、大当利、冨蘭志壽、黎大丸、爽 など。

とりわけ今日は、165㎝・60.6㎏と一般人よりも小柄と言っても差し支えないだろう、宇瑠寅 太郎(うるとら たろう)に焦点を当てる。

宇瑠寅 太郎(うるとら たろう)こと高橋 徹(たかはし とおる)は1989年5月8日生まれで33歳にもなる。

経歴も少し変わっている。

高校卒業後、大手企業に勤務していたが、「このままでいいのか」と自問自答する生活が続いていた頃、現・式秀親方にスカウトされ、21歳4ヶ月で入門。

相撲経験全くなし。
柔道などの経験はあるようだが、何せこの体格。

2010年9月場所、櫻潮 功道(おうしお こうどう)の四股名で初土俵。
序ノ口と序二段を行ったり来たりすること3年。

2013年11月場所より四股名を宇瑠虎 太郎(うるとら たろう)と改名。心機一転を誓った。奇抜なこの命名、「3分間全力で土俵上で動き回ってほしい」という願いが込められてるそうだが、相撲という競技を3分間を全力で動き回ったら、ヘトヘトになり、精も根も尽き果ててしまうのではないかと懸念があるのだが、それはさておき、名付け親は部屋の女将。

しかし、相撲人生は好転せず苦労が続く。

両肩の脱臼や左足骨折(プレートを入れる程の)
2019年1月の左肩脱臼は、腸骨を移植するまでの手術を受けたほど。

つらく苦しかったこの時期には、こんな逸話があった。

2015年の前相撲で現在の小結・霧馬山、また引退してしまったが、30年ぶりのカナダ人の力士として話題になった誉錦との対戦。
2020年7月場所には戦後初の50歳現役力士、あの華吹(はなかぜ)に善戦及ばず、50歳の初白星を献上した。

いずれの対戦も敗れたので、言葉は悪いが、宇瑠虎(華吹戦では宇瑠寅)は引き立て役になった形となる。悔しかったろう。

またこの期間(2014年11月場所~2019年7月場所)にかけて、
前相撲4場所
番付外8場所
を数えた。

※前相撲と番付外の違い

前相撲(まえずもう)・・・入門した直後の力士が本場所でまず取る相撲。ケガや病気で上位から陥落し、前相撲を取る力士もいる。

番付外(ばんづけがい)・・・新弟子検査の合格者、前場所序ノ口で全休し陥落した力士、前場所の前相撲を全休した力士。これらの力士をまとめて「番付外」と呼ぶ。
とある。ほぼ同じような意味か。呼び方・言葉の違いだけか。

本題に戻す。

2018年1月場所より、宇瑠寅 太郎と改名(呼び方同じ)

2019年9月場所以降は、序ノ口から陥落することはないが、序二段より出世した形跡もないようである。

通算成績147勝210敗63休(65場所)
最高位・西序二段38枚目    sumogamesより

著しい軽量・華奢な体型を自覚し、立ち合いから奇をてらう動きを見せ、勝機を見出す宇瑠寅流。

~小兵名力士の昨今~

肩の脱臼から這い上がった力士と言えば、あの大横綱千代の富士がいる。

小兵力士の代表格には、現役では炎鵬照強、近年では舞の海維新力(チェコ出身の)隆の山辺りが名を馳せた。

33歳になった今も、日々稽古に精進し、研鑽を重ねる宇瑠寅に栄光が舞い降りる日は来るのか。

栃錦と若乃花とデンマーク体操と

 栃錦清隆

後の第44代横綱であり、現役引退後は年寄・春日野として、数々の名力士を輩出し、さらに日本相撲協会理事長として、今日(こんにち)の相撲界発展に努めた。177㎝132㎏の上体で得意技は、左四つ、寄り、押し、上手出し投げとする万能型だった。

そんな栃錦(現役時代)の愛称が次の通り

マムシ

名人横綱
技の博覧会
デンマーク体操
土俵の名人    Wikipediaより
とあった。

デンマーク体操って何ぞや?と思って調べてみると、
ダイナミックな動き・筋肉の伸展運動・振動運動を取り入れて構成されたデンマーク発祥の体操。とあった。
これでもわからなかったから、動画がないかと探してみたところ

まぁ、とにかく四肢を絶え間なく動かし、飛ぶ・跳ねる。
これらが、当時の栃錦の相撲っぷりと重なるものがあったのだろう。

またそれらが、第45代横綱・若乃花との名勝負の数々とつながってくる。

二人は水入り当たり前の激しい熱戦・好勝負を演じ続けてきた。
両者の対戦成績は、栃錦の19勝15敗とほぼ拮抗しており、土俵狭しと目まぐるしく動き回る二人の攻防が、全国の相撲ファンを熱狂させた。

栃錦が逝去して、33年が経つ。

相撲界は巡り巡って大横綱・白鵬が去り、新たな時代が到来するべく、連日熱戦が繰り広げられている。

あたみんとひふみん(熱海富士と加藤一二三)

 今年初場所を3勝8敗4休の成績で終えた伊勢ヶ濱部屋の人気者・熱海富士。

11日目からの休場理由は、インフルエンザ感染によるもの。相撲人生初の休場となってしまった。

大分日が経ったから、通常の生活を送れてるだろう。稽古は再開できたかな。

角界入りしてからのここまでを振り返る。

2021年1月・3月場所を、序ノ口・序二段優勝とこれ以上ないスタートを切った。

各段優勝インタビューで、その笑顔と素朴な人柄、語り口がいいキャラクターだなとすぐに焼きついた。

初土俵から所要8場所で関取昇進、その新十両の場所で7勝8敗と負け越すも、十両も4場所で通過。2022年11月場所で新入幕。幕内の壁は厚く4勝11敗で終わり、出直しとなった。

まだ、20歳と伸び代十分。得意の右四つに磨きをかけ、隆盛極める伊勢ヶ濱勢の一角に食い込んでほしい。

Wikipediaによると、妹の陽奈(ひな)は、熱海富士の母校、飛龍高等学校に在学し、2022年秋から、同相撲部初となる女性主将に就任。普段は、男子部員に交じって稽古に励み、去年4月には国際女子相撲選抜大会・軽量級3位に輝いたそうだ。女子相撲の怪物ここにあり!

かわってこちらは、「将棋界の異端児」「神武以来の天才」「1分将棋の神様」の異名を持つ、将棋棋士であり、タレントとしても活躍している加藤一二三。

将棋界では、名人位を獲得した実績があるほどの超一流棋士。
名人=(相撲界)で言う横綱である。

今でいう、藤井聡太的な存在だったのだ。

最年少記録だけでも
史上最年少プロ棋士
最年少勝利・最年少敗北
最年少A級昇級
タイトル戦最年少記録
などがある(まだまだあるかもしれない)

2013年頃から、バラエティー番組に進出。
フジテレビ系「アウトXデラックス」に出演。
「ひふみん」と呼ばれ、一躍、お茶の間の人気者になった。

「あたみん」と「ひふみん」、偶然にもひらがな4文字の愛されキャラの二人を、これからも応援せずにいられないと思った。

白鵬断髪式・引退相撲に三女から愛情たっぷりメッセージ

先日の1月28日に「白鵬引退宮城野襲名披露大相撲」(白鵬断髪式)が開催された。

オープニングセレモニーでは市川團十郎の歌舞伎演目に場内からどよめきが起こる斬新な演出。

断髪式の参加者も、元首相の森喜朗氏や鳩山由紀夫氏、トヨタ自動車社長の豊田章男氏、プロ野球読売巨人軍・原辰徳監督、芸能界から松山千春、吉幾三、YOSHIKI、GACKT、デーモン閣下、関口メンディー、東山紀之、スティーブン・セガールなど類を見ない豪華な顔ぶれ。

中でもほっこりして涙を誘われる場面が、断髪直後の家族とのふれあい。
愛娘、三女・眞結羽(まゆは)ちゃんの愛情たっぷりのメッセージが読み上げられた場面。

当初は書き上げた手紙を読む予定だったそうだが、しっかりと暗記。
最後には大観衆へのお礼の言葉を述べ、会場から温かい拍手が起きた。

こんな可愛らしい演出をされたら、白鵬(親方)もたまらないだろう。デレデレといった感じ。

さぁ、新たな旅立ちだ。

北青鵬と炎鵬の関取勢に、来場所は所要1場所で新十両を決めた落合、幕下上位には川副、向中野とアマチュア相撲で抜群の実績を出したホープ達が次々と控えている。

宮城野新時代の幕は上がったばかりだ。

栄光と挫折を知る2人が春場所を迎え撃つ

 大相撲春場所の十両昇進力士は4人。

新十両は玉正鳳(29=片男波)と落合(19=宮城野)の2人。

再十両は友風(28=二所ノ関)と徳勝龍(36=木瀬)のこちらも2人と発表された。

新十両の2人は、玉正鳳=玉鷲の義弟、落合=史上初の幕下付出から所要1場所で十両昇進、現宮城野親方(元横綱・白鵬)がスカウトと共に話題性があるが、再十両組も負けてはいない。

まずは、徳勝龍。
幕下転落後、わずか1場所での関取復帰となったが、記録が伴っている。
①史上3人目の幕内最高優勝経験者からの復帰。
②戦後4番目の年長再十両。
という快挙である。

明徳義塾高校から近畿大学を経て、2009年1月場所初土俵。同期には、宝富士・貴ノ岩・皇風といった錚々たる顔ぶれ(花のロクイチ組・昭和61年度生まれの関取となった総称)

2011年11月場所新十両、2013年7月場所新入幕、幕内の壁に跳ね返されることもあったが、這い上がった。

2020年1月場所、4場所ぶりに返り咲いた幕内で、なんとあの貴闘力以来20年ぶりに幕尻優勝を14勝1敗の好成績で成し遂げる。

突き押しが多い取り口だが、優勝を決めた一番は堂々と四つに渡り合った。

優勝インタビューも話題になった。

翌2020年3月場所には、自己最高位・西前頭2枚目まで上り詰めるも、4勝11敗と大きく負け越し、2021年11月場所から7場所連続十両も負けが込み、幕下に転落し、現役続行も危ぶまれたが、わずか1場所での関取復帰は、高齢記録のおまけ付きだった。

36歳7ヶ月で迎える3月場所は、一層の円熟味を増した相撲を見せてくれるのであろうか。

そしてもう一人、友風。

現在では二所ノ関部屋所属だが、「風」=停年前の尾車部屋に所属していた力士だ。

大卒からプロ入り。
ここまで、わずか6年足らずの土俵生活だが、力士人生は波乱万丈だった。

序ノ口デビューから、8場所で新十両を決めると、その場所でいきなりの十両優勝。十両も2場所で通過。

入幕後、3場所目となる2019年9月場所には西7枚目で11勝4敗で殊勲賞を獲得。当時の横綱・鶴竜を下し、金星も記録している。翌9月場所にも鶴竜に勝って、2場所連続の金星を挙げた。

ここまで順風満帆できたと言える土俵生活が、暗転するのは2019年11月場所2日目・琴勇輝戦だった。



土俵下に転落した際に右膝を痛め、外側側副靭帯・前十字靭帯・後十字靭帯・ハムストリングの断裂、半月板損傷、大腿骨と脛骨の骨折と判明。右膝から下は皮膚、内側側副靭帯と血管1本だけが繋がっているような状態だった。
医師からは「復帰どころか歩けるまで回復できれば良い方」とまで通告を受けるほどの重症だったが、同じように現役時代ひざの大ケガで幕下から大関まで這い上がった当時の師匠(元大関琴風)からは「心も相撲も入れ替えろ。みんなケガをして這い上がってくる。やっとプロになったんだよ」と以前から押し相撲からの引き技を持ち味とする取り口を危惧しつつも、同じ苦しみを味わった者にしかわからない深みのある暖かい言葉をかけ、母親や周囲の人達からの励ましもあり、再起を決意。計4回の手術にも耐えた。

本場所を1年以上休場、土俵復帰は2021年3月場所。番付は西序二段55枚目まで落ちていた。土俵に上がることの恐怖心があったそうだが、この場所を6勝1敗で終えた。

その後も着々と勝ち越しを重ね、2022年1月場所では東幕下15枚目まで番付を戻し、十両復帰を射程圏内に捉えた。1年後の今年初場所、東2枚目で4勝3敗と勝ち越し、場所後の番付編成会議で、悲願の再十両昇進が正式に発表された。

栄光と挫折を味わった徳勝龍と友風。
相撲の力量以外にも、どん底から這い上がった精神力や人間力を見せつけてくるような怖い存在になりそうである。