豪ノ山 清く正しく逞しく

 幕内2場所目・今場所東幕頭5枚目の豪ノ山(武隈)は9勝6敗の活躍を見せた。
激しい突き押しに張られたら張り返す(先輩力士であろうと)闘志をむき出しにして戦うそのスタイルに私はすっかり心を奪われた。秋場所を振り返る。

豪ノ山の良さって何だろう。
立ち合いから激しい突っ張りを浴びせ、電車道で決める明白で痛快な相撲。
土俵際まで追い詰められたり流れが悪く劣勢になっても、土俵を割ったり簡単に諦めることなく、持ち堪えて巻き返し、逆転勝利を手にすることもあった。
ゆえにメンタルとフィジカルの強さ、それを支える豊富な稽古量・日々の鍛錬が裏付けられると思う。
場所前に武隈部屋が所在する「雪が谷大塚」を題材にしたテレビ番組があり、豪ノ山の稽古模様が紹介された。その時に、かなりのキロ数がありそうなタイヤを使ったトレーニングが映し出されていた。以前からずっと続けているようなので耐久力もついてきたのではないか。
この秋場所もその訓練の賜物だなと当てはまる取組として、湘南乃海戦・竜電戦・(負けたけど)大栄翔戦など見ていてそう思った。

(要するに)簡単に落ちない・手をつかない・押し返す・寄り返す力 豪ノ山にはこれがある。

今場所対三役には1勝(翔猿)3敗(貴景勝・豊昇龍・大栄翔)で終わった。
来場所は三役陣に一泡ふかせるぐらいの思い切った相撲っぷりを見せてほしい。

11月の九州場所は、番付2~3枚の上昇があるか。

豪ノ山 登輝(ごうのやま とうき) この四股名と本名の登輝と掛け合わせて「強く山を登って輝く」という意味・願いが込められているそうだ。

次の九州場所まで、どれだけの進化を成し遂げることができるのか。

強烈な突き押し(時には張り手)を武器に、25歳の若侍が更なる強い山を登って輝いてほしい。

来場所も期待してるぞー!↓↓↓

将来の横綱へ向けて 大の里の秋場所を検証

 今場所の新十両は4人いた。皆、アマチュア上がりのエリートとして入門してきた。
中でも別格だったのは、大の里(二所ノ関)である。主に2年連続のアマチュア横綱の実績が認められ、今年5月、鳴り物入りで幕下10枚目格付出からデビューした本格派・逸材である。

その大の里の秋場所最終成績は12勝3敗で準優勝・優勝次点と誠に立派なものだった。
大の里・9月の躍動を振り返る。

初日から無傷の9連勝を果たし、これ以上ない滑り出しをみせた。
積極的に突き押して「押し出し」しっかりと受けとめ「寄り切り」
がっちり当たった上で相手の動きを見極め、タイミングよく「はたき込み」も見せた。

初黒星を喫したのは、10日目・一山本戦。
一山本の左のど輪で上体を起こされ、大の里こらえたが、直後に一山本のはたき込みが決まった。大の里も足がついていかなかった。

12日目に組まれた同い年の北の若戦では、相撲内容は完全に勝っていたが、土俵際で逆転の上手投げを食ってしまった。回しを引いているか・いないかの違いで、最後、北の若に逆転を食らった悔しい負けだった。

千秋楽の狼雅戦は勝ち急ぎが敗戦を招いたのか、狼雅は回しは取っていなかったが、左に回りながら「グルン」という感じの威力がまさったのかすくい投げが決まり、千秋楽に痛すぎる星を落としてしまい、十両優勝を逃してしまった。

振り返ってみるとこの敗れた3番は、あと少しの詰め・足の動きとの連動がうまくいかずに(難しいもので欲張りだが)白星を取り損ねたか。つまり、実質勝っていたように思う。

12勝の勝ち星の内訳を調べたら
押し出し  6勝
寄り切り  3勝
はたき込み 2勝
押し倒し  1勝 でした。

圧倒的内容で勝つことが多かったが、先輩力士(プロ)はちゃんと課題も与えてくれたのでは。
半年経って、1年経って、3年5年経った頃、どんな力士に成長しているのか。
相撲を見る楽しみがまた増えた。

定番の相撲みやげをどうぞ↓↓↓






熱海富士と正代に感謝申し上げます 

 貴景勝の優勝、熱海富士の大健闘から一夜明けまだ興奮が冷めやらない。世間・ネット上では決定戦での決着(というか立ち合い)に対して、やはり非難の声が多いようだ。
今日はどういう内容で投稿しようか考えたが、私の推し力士・熱海富士と正代の今場所の相撲を何番か振り返ろうと思う。

今場所の熱海富士に「パワー」「破壊力」「圧力」などの表現する言葉が並び、よく目についた。
しかし11勝を振り返ってみると、土俵際の粘り勝ち・劣勢からの逆転で勝利を積み重ねたのも印象に残っている。

~14日目・阿炎戦~

優勝争いも佳境に入っていた14日目、阿炎の立ち合い大きな変化で、普通ならこれで終わる・足が出てしまってもおかしくないぐらいだが、ここで持ちこたえ逆襲に転じ、力強く寄り切った相撲。稽古相手に恵まれた伊勢ヶ濱部屋で日頃からかなりの番数をこなし、鍛錬を積んでる証だろう。見事に阿炎を打倒してみせた。

~6日目・御嶽海戦~

取り直しになったこの一番。本割りにしても、土俵際で決着がついた似たような相撲だった。相撲内容は決して褒められたものではないが、ここで残れたのも稽古の賜物ではないかと思い取り上げた。

~(3日目)妙義龍戦・(4日目)千代翔馬戦~

相撲巧者・妙義龍戦でも、右四つから出し投げで崩して寄って出てきたところに小手投げでズバリと決め、翌日の千代翔馬戦でも土俵際ですくい投げを決めてみせた。劣勢を挽回できるメンタルと強靭な肉体・スタミナも徐々につき始めているのであろう。

ー今場所の正代

今場所3関脇に3連敗スタートの正代、厳しいかな・難しいかなと思っていた。
そこから豊昇龍と貴景勝の両大関を撃破したのは痛快だった。「ようやく目が覚め始めたかな」と。

~4日目・豊昇龍戦~

鋭い踏み込みから一気に押して出る豊昇龍。左が入った正代。思い切りよく振り回すようにすくい投げを決めた。先輩大関は新大関へ相撲を通してメッセージを送ったともいうべきか。

https://www.youtube.com/watch?v=-Mihzmpbg7I

~7日目・貴景勝戦~

貴景勝がいなしたあと、強烈な張り手を右に左に食らわせるも正代は怯まなかった。逆にそこにつけこみ押し出した。終わってみればこの張り手で正代の闘志に火がついた形になった。

~14日目・朝乃山戦~

14日目のこの相撲は会心の相撲だった。立ち合いからもろ差しとなり、一気に寄り切って朝乃山を寄せ付けなかった。全くの正代ペースで強さと逞しさを感じ「やればできるじゃん・いけるじゃん」と思えた。

ー二人への所感

正代
左足首や右足親指の過去のケガの具合はどうなのか、全てが完調というわけではないだろうが、私はまだまだ十分に三役上位で2ケタ勝てるだけの力があると見ている。
31歳、全然老け込む年ではない。

熱海富士
これはサイドストーリーになるのだが、熱海富士は母子家庭で苦労して育ったと聞く。
小学生の頃には仕事の母に代わりに夕食を作り、高校時代は家計を助けるため、皿洗いのアルバイトで通学交通費などを自ら稼いだそうだ。しかし、熱海富士からはそういったつらい過去から卑屈さや自虐的な面が全くなく、どこまでも温厚で礼儀正しく、穏やかで和やかな好青年をこれからも応援し続けようと強く思った。

秋場所を盛り上げてくれてありがとう、両雄へ。

来場所も頑張ってくれ!↓↓↓

21歳若武者物語 秋場所千秋楽

 昨日14日目終えた時点で、優勝争いトップに立っていた。
相撲のネットニュースを見渡せば、「熱海富士 所要18場所史上最速V王手! 21歳0カ月で初賜杯なら白鵬超え年少記録」との見出しが目に付いた。もの凄い偉業に挑む熱海富士。今日の結果は如何に!?

~熱海富士・朝乃山戦~

若干朝乃山に分のある立ち合い、そのまま寄っていく朝乃山。熱海富士も左上手を取るが、流れを変えることができずに寄り切って朝乃山。熱海富士4敗になりこの時点で優勝の行方は決定戦に持ち込まれた。

~大栄翔・貴景勝戦~

4敗同士の一戦となったこの2人の対決。
お互いの激しい突き押しから、貴景勝が左のはず押しで大栄翔を横を向かせ送り出し。大関の圧力が勝った。貴景勝、決定戦進出!

他の4敗の2人 髙安は霧島に、北青鵬は豊昇龍に敗れ決定戦進出成らず!
豊昇龍は内掛けを絡めながら「渡し込み」で千秋楽勝ち越し。新大関として周りの目・立場状況が変わり苦労の多い場所だった。

~優勝決定戦 貴景勝・熱海富士戦~

熱海富士の対抗馬として残ったのが貴景勝。
4度目の優勝成るか、大関としての威厳を示すことができるのか。
熱海富士が鋭い踏み込みを見せたが、貴景勝左に動いてはたき込み!
何ともあっ気ない幕切れとなったが、大関が(立ち合い前の)相手の雰囲気・オーラを読み感じ取ったのか、優勝を勝ち取った。敗れた熱海富士は悔し涙にむせぶ。
11勝での優勝は決して褒められたものではないが、貫禄を見せつけた。

~他の取組をダイジェストで~

正代は宝富士に左四つから巻き替えの応酬から上手投げを決めて、千秋楽勝ち越し。

豪ノ山は翔猿に常に先手を取って突いて出て、押し出した。
先場所の新入幕トリオは、豪ノ山9勝・湘南乃海7勝・伯桜鵬・全休という結果に終わった。

※十両の優勝争いは、一山本が大奄美を押し出し、大の里が狼雅に土俵際のすくい投げで敗れ一山本が13勝2敗で優勝した。

熱海富士の偉業・快挙達成は成らなかった。
今日は地元から母・奈緒さん、妹・陽奈(ひな)さんが国技館に駆け付け、パブリックビューイングからは、熱海市民が懸命の声援を送ったが残念な結果に終わった。

今場所最後までこの21歳の新鋭に多くの相撲ファンが取り口・(相撲に賭ける)一途さ・人間臭さに虜にされた。

何も恥じることはない 胸を張ろう 来場所はもっと強くなる

両者にありがとう!↓↓↓




優勝争い、かけめぐる興奮 秋場所14日目

 熱海富士の毎日の奮闘は感動レベルだ、勝ち負けを超えている。
今日はどんなドラマを見せてくれるのか、阿炎戦。
立ち合い阿炎は左からの張り差し、熱海富士は出足よくそのはずみで土俵を割りそうになったがこらえる・持ちこたえた(よく稽古してる証だろう)左上手を取った熱海富士。阿炎も同じように左上手を取るが、熱海富士委細構わず寄って出た。阿炎の上手を切って最後はがぶって寄り切り。鼻血が滴り落ちたが、花道奥で(恒例となったが)付け人と喜びを分かち合った。日頃からの豊富な稽古量と相撲道に対する一途さが勝利を呼び寄せたか。明日は朝乃山戦。勝てば幕内優勝を手に入れる。

同じく3敗の貴景勝は結びで豊昇龍との大関対決。
貴景勝が突き放し豊昇龍に対して右上手を遠ざけていたが、豊昇龍が右に重心をずらしながら上手を取ることに成功。流れのまま頭を抑えて上手投げ。貴景勝土俵にゴロンと転がされた。貴景勝のいい展開だったが、上手を取られた時点で自由を奪われた感じになった。突き押しきれなかったし。痛恨の黒星で4敗に後退。反対に新大関も必死だ。7勝7敗の五分に星を持ち直し、千秋楽に勝ち越しをかける(北青鵬戦)

正代・朝乃山の元大関同士の対決は、正代が立ち合いスパッともろ差しになり一気に寄り切った。興味深い一番だったが、決着はあっ気なかった。正代(東前頭3枚目)は明日の千秋楽、宝富士戦に勝ち越しをかける。朝乃山8勝6敗とし、熱海富士の「最後の壁」として明日立ちはだかる。

~十両の優勝争い~

2敗で追いかける大の里は東白龍をほぼ左のど輪1本で押し倒し、圧勝。明日は東筆頭の狼雅。
1敗トップの一山本・北の若戦は突き落としで北の若。相手の指が目に入ったのか、目を痛がる表情・仕草が何度もあった。悔やまれる2敗目で千秋楽は大奄美と。
十両は一山本と大の里が2敗で並び、この両雄に優勝争いが絞られた。

明日の千秋楽、幕内では21歳の若者(熱海富士)がその若さと破壊力、相撲に賭けるひたむきな姿勢で神様を振り向かせることができるのか。
十両は緊張と重圧の中で、栄冠を手にするのは一山本か(未完の大器)大の里か。

千秋楽の大一番が待ちきれない。

熱海富士に念が届け!↓↓↓