史上初・40代優勝の夢を見た春

 春場所序二段優勝争いは、6番相撲を終えた段階で異変あり。
無敗の6連勝を記録した3名の中に何気にしれっと40代力士が存在したからだ。

飛燕力 敬介 (42歳・押尾川)

中卒・当時15歳で角界入り。
筋金入り・たたき上げの勇者だ。アマチュア相撲・他の格闘技経験もないのでしょうか。

当時の師匠の諸事情(定年・それに基づく部屋閉鎖間近)で、所属部屋が変わること2回。
酸いも甘いも嚙み分けてきた大ベテランである。

結局、13日目に颯雅(そうが・二子山)に敗れて6勝1敗で序二段優勝成らず残念(相撲ファンとして)悔しい気持ちになった。
何か生活習慣を変えたり(春場所に向けて)特別なことをしたわけではなさそうだ。
(本人の6連勝直後のコメントは)「良く寝て良く食べている。外に出ずに宿舎で飲んでます」とあった。

~飛燕力の主な活躍~
・2014年7月に(ここまで)唯一の各段優勝を三段目で果たしている(7戦全勝)
・自己最高位はその直後9月の西幕下29枚目(幕下在位はこの1場所のみ)
・昨年1月に今を時めく安青錦と序二段で対戦している

飛燕力の今場所大勝ちの要因はやはり「地道に続けること」が、時としてこういう良い日(時間)をもたらせてくれるということか。

新十両入りおめでとう! 夢道鵬!

 貴闘力チルドレン、四男・夢道鵬の新十両昇進が発表された。

4人いる息子さんのうち、3名が力士、1名がプロレスラー・納谷幸男(長男)
ここまで長かったか短かったか、どうなんですかね。

初場所に幕下優勝を決め、自己最高位を9枚更新した今場所、西幕下3枚目で4勝3敗と一発で関取昇進を決めた。
番付上当たり前のことだが、対戦相手は次から次へと関取経験者、しのぎを削るホープしかいない(元関取二世も含む)
今回同時に新十両入りを決めた三田(二子山)宮城改め宮乃風(中村)に勝っている。

血は争えない。
オヤジ・貴闘力
アニキ・王鵬 から受け継ぐ突き押し相撲で十両入り。
「祖父に顔向けできないような生き方はしたくない」と言い切った23歳。

名門・埼玉栄高校相撲部からまたも関取輩出。

ここまで力士(プロとして)32場所を要した。
33場所目で迎える新十両の場所は(本当の意味での)夢の道の始まりか。

春場所の活躍を受け、時疾風が参上致します!

 時疾風が自身幕内4場所目で初の勝ち越しを記録(幕尻・東18枚目)
千秋楽に元大関の霧島に敗れて10勝5敗に終わったが、最後まで優勝争いの一角として存在を示した。

獲得に至らなかったが、三賞候補にも名を連ねたほど。ここをもうちょっとつつけば、千秋楽取組前に出された条件として(優勝した場合)殊勲賞(15日目・霧島戦に勝てば)敢闘賞の可能性も残していた。

9日目から怒涛の6連勝を記録。
(目に留まった取組として)春場所を盛り上げ、互いにしのぎを削った美ノ海戦の休むことなく攻め続け、右上手を軸に寄り切った相撲。

(時疾風から見て)随分と体格差が感じられ、攻略まで持っていくのに手間がかかりそうな竜電戦で見せた、完全に胸が合いがっぷりからのすくい投げなんてよかったな。
流れの中から生まれたすくいなげとしか言いようがないが、小柄が大柄を切って落とした爽快な一番だった。

時津風の系譜を受け継ぐ東京農業大学卒。
今場所の活躍を足掛かりに、疾風怒濤の活躍といきますやら。
宮城県栗原市出身、28歳。

朝乃山、再び栄光に向かって

 1回目は自身の不祥事で、2回目は膝の大ケガで。
公傷制度廃止の憂き目にあって、7場所の大関在位経験者が、西三段目21枚目まで番付を下げた朝乃山の春場所は、7戦全勝の三段目優勝で見事6場所ぶりの再起を果たした。

プライドをかなぐり捨て、また帰ってきた朝乃山。
同じ北陸地方の出身・富山県の朝乃山に対して、隣県である石川県出身の炎鵬(同じ1994年生まれ・学年は朝乃山が1つ上)と大けがからの再起という意味では切磋琢磨しながら関取復活を目指す進行形同士である。

7戦、退けてきた顔ぶれを見渡せば、三段目って言ったって
5日目 碇潟(オヤジ・甲山親方、兄・若碇)
9日目 矢後(元・西前頭10枚目)
と有望力士と元関取をきっちり下している。

朝乃山はこう話したという。
「僕の膝よりも、炎鵬の首のけがの方が大変だと思う。それでも序ノ口から復帰している。僕も、誰かけがした力士の手本になるように、しっかりと活躍できれば」と。

揺るぎない信念のもと、再び立ち上がった31歳。
通算2度目の三段目優勝を手土産に、来場所は幕下上位へ再進出か。

7番相撲の千代大牙戦です↓↓↓

安青錦と美ノ海の奮闘も忘れてならぬ 2025春場所千秋楽

 3月場所の最終勝者は大関・大の里。
12勝3敗による優勝決定戦を制して、見事3度目の優勝を飾った。
勝った相撲でも、引きに頼ってギリギリ白星を挙げたりと、勝ち星ほどのいい印象は少なかったが、昨日から今日の決定戦を含めた3番は内容に修正が見られた。
優勝おめでとうございます!

しかし、本日の当ブログではその優勝劇よりも敢闘賞を受賞した2力士、春場所を最後まで盛り上げ、三役上位陣にも大健闘してみせた安青錦美ノ海をより焦点を当てて振り返りをしようと思う。
まずは、史上2番目に速い初土俵から10場所目で三賞の初受賞を果たした安青錦の楽日の相撲から。
これより三役の直後の王鵬戦に登場した。
関脇から圧力をかけられようとも低い体勢は崩れない。頭をつけて潜って寄りながら、自らの左足を王鵬の右太ももに密着させて裏返す感じで切り返した。

このキャリアでこれをやってのけるのはかなりの高等技術の持ち主だ。
今日で21歳を迎えた若者としては似つかわしくない感じの、真面目で謙虚、稽古熱心で何より相撲をよく知っていると強く思う。
今場所は(今後に必ず活きる)かなり濃厚ないい経験をしたのでは。改めて凄い原石だと感じました。

敢闘賞受賞はもう一人、31歳での初受賞となった(沖縄県出身力士でも初めてらしい)美ノ海はこちらも今日勝てば2ケタに白星到達の東関脇・大栄翔。
(大栄翔の)もろ手突きからかなりのプレッシャーがかかろうとも、右からバチーンと強くいなした。すかさず突っ張りを連射し、押し出した。安青錦と同じく11勝で今場所を終えた。

7勝1敗と絶好調の滑り出しを見せた。終盤に入り尊富士と阿炎に連敗して、疲れてるのかなぁ(今場所は)もう厳しいのかなぐらいに思っていたが、最後に3連勝をやってのけ(13日目以降の)対戦相手も玉鷲・髙安・大栄翔と実力者達をきっちりと沈めてみせた。おととしの11月場所新入幕以来、十両に陥落することなく、幕内9場所目でたどり着いた三賞受賞。来場所も嘉陽(新十両濃厚か)宮城らと「沖縄旋風」を巻き起こしてほしい。