一年納めの九州場所、初日。

 一年納めの九州場所。

毎年11月場所中に何度も聞かれるこのフレーズ。

待ちに待った九州場所が、いよいよ初日を迎えた。

横綱照ノ富士が残念ながら休場になったが、優勝争いに焦点をおくと、図抜けた力士が見当たらないので、 今場所も混迷を極める争いになりそうだ。

幕内取組から振り返る。

大関への確かな足固めとしたい若隆景は、先場所最後まで優勝争いに加わった髙安との一番。

かちあげから突っ張る髙安。若隆景も負けじと低い姿勢からあてがい、抵抗を見せるが、髙安の重い突っ張りと圧力になすすべなく押し出しに敗れ、今場所も黒星スタート。
右足のケガで、場所前まで治療をしていたという情報もある。
切り替えて頑張ってほしい。

かど番大関の正代は、新三役の翔猿と。

立ち合いから回転のいい突っ張りで主導権を握る翔猿。正代はじっくり見ながら圧力をかけるが、翔猿の早い動きと、最後まで中に入れさせようとしない突っ張りが功を奏して、翔猿の勝ち。  
正代の勝たなきゃいけない気持ち、カド番への危機感、格下に負けられないなどの「気」は私には見えた気はしたが、NHKの2大看板解説者は、「稽古が足りない」「関取衆との稽古をしてほしい」などと手厳しかった。

先場所優勝者の好漢・玉鷲は、こちらも優勝経験者の逸ノ城との対戦。

逸ノ城、立ち合いから一気に出るが、玉鷲、突き返す。逸ノ城、右にいなし、玉鷲の体勢が悪くなったところを押し出し。

今場所新入幕の熱海富士は、平戸海との初日。

完全に立ち遅れた感じの熱海富士。平戸海、もろ差しから一気に勝負を決めた。

関脇に陥落した御嶽海は、明生に付け入る隙を与えず初日白星。
霧馬山は宇良に肩透かしで勝った。スピードあふれるいい取り口、今場所をさらに盛り上げる存在となるか。
若元春は、こちらも成長著しい翠富士との一番。強烈な右のおっつけから右上手を取った若元春が、苦し紛れに巻き替えにきた翠富士を寄り切り、白星発進。

十両取組を紹介する。

新十両同士の一番となった對馬洋と元大関・雅山が初めて育てた関取、狼雅。

左前回し引く狼雅、寄って出て勝負を決めにかかるが、土俵際の投げの打ち合いで對馬洋の下手投げが決まった。
先場所十両優勝を決めた栃武蔵は、終始低い体勢で北の若を押し出し。今場所も旋風を巻き起こせるか。
人気者・炎鵬は、浅香山部屋唯一の関取、魁勝に対し左前回しを取り、休みなく動き続ける中で、下手出し投げで勝った。

東幕下4枚目で今場所を迎えた元大関・朝乃山は、先場所幕下優勝・元十両の大成龍と対戦。
右下手、左上手と朝乃山が取り、左上手で大成龍を崩し、そのまま寄り切った。まずは、無難に1勝を勝ち取った。

新三役(小結)、翔猿のプチ紹介。

 2022年4月27日付の日刊スポーツによれば、

幕内力士の平均身長は183・3センチ、平均体重は157・3キロという。

来たる九州場所を迎える関取に、その平均数値をあざ笑うかのように活躍し、稽古に精進している力士がいる。

翔猿正也(とびざる まさや) 追手風部屋

174センチ/133キロと上記の平均身長体重から比べると、「小兵」という言葉に当てはまる力士か。

先場所・9月場所では、1横綱・1大関に勝ち、10勝5敗で初の殊勲賞を受賞。

今度の日曜日から始まる九州場所を東小結で迎える。

押しのスタイルが主ではあるが、その後の相撲の展開・流れ・決まり手に至るまで、この体をフルに使ったいろいろな技を繰り出して、観客を楽しませてくれる。

勢い余って砂かぶりや、花道の奥の方まで行ってしまうことも少なくない。

平成29年(2017)7月場所、新十両昇進を機に四股名を「翔猿(とびざる)」と改名。

その由来は、翔猿自身が申年生まれで、自らの動きを「猿みたい」とみているところかららしい。

縦横無尽に土俵を駆け巡り、果たしてどんな15日間を見せてくれるのか。

東十両4枚目・木瀬部屋の英乃海は実兄。

相撲界屈指のイケメン力士として知られ、女性ファンが多い。

好きな食べ物はグラタンだそうだ。

狼雅と對馬洋、新十両を決める!

 28日、九州場所の番付編成会議があり、ロシア出身の狼雅(23・二子山)と對馬洋(29・境川)が決まった。

9月場所、西幕下筆頭に番付されていた狼雅が4勝3敗でついに、2018年設立した元大関雅山の二子山部屋に待望の新十両が誕生した。

1999年、ロシア・トゥヴァ共和国クズル出身の23歳。
14歳の時に、モンゴルから移住。ウランバートルの街中で、白鵬杯の看板を見た父から出場を勧められ、数々の大会で入賞。彼の人生が変わる。
高校相撲の強豪・鳥取城北高校から勧誘を受け、2015年4月から相撲留学。
3年次の高校総体では、日体大柏高校3年の(現・豊昇龍)に勝ち、高校横綱のタイトル獲得。プロの道へと進む。入門先は相撲部石浦総監督が選んだそうだ(現役力士の石浦の父であることも知られている)

序ノ口・序二段優勝を果たし(序二段優勝決定戦では、のちに横綱となる照ノ富士に勝つ)、順調な滑り出し、そこから5勝2敗の星が5場所続き、幕下8枚目まで出世を果たすも、プロの厚い壁に跳ね返され、新十両には、幕下通過まで連続19場所を要した(コロナ禍による1場所中止を除く) 
フルネームは今年3月場所より、狼雅外喜義(ろうが ときよし)と名乗る。前述の石浦の父・外喜義氏から拝借したものか。

もう一人の對馬洋は、長崎県諫早市出身の29歳。
小学校4年で相撲を始め、頭角を現したのは、高校時代から日大相撲部在籍中。卒業後、境川部屋に入門。初土俵の場所でヒザの大ケガに見舞われるも、挫けることなく土俵に上がり続けた。
2019年初場所には、幕下10枚目に番付され、十両を射程圏内に捉えるも、全休2場所などがあり、三段目に降格される紆余曲折がありながら迎えた今年の秋場所では、幕下4枚目で5勝2敗を上げ、念願の新十両を決めた。

身長184㎝・体重130㎏と、体重の方は、今どきの力士からすれば軽量の部類に入るか。

尚、四股名の對馬洋は、大正時代の大関として活躍した力士でもある。
調べてみたら、まだ1場所10日制の頃だったんですねぇ。

旭大星、驚きの現在地。

 旭大星 託也 (きょくたいせい たくや) 大島部屋 33歳

北海道旭川市出身 

最高位前頭8枚目

ケガで苦しみ、長期休場していたのは知っていたが、まさかここまで番付を落としていたとは・・・。

最新の九州場所の番付より、今場所は西序ノ口5枚目に位置していた。

近年の休場に繋がるケガとして
2020年9月「左アキレス腱断裂」
2021年7月「左膝関節外側側副靱帯損傷」

とあった。

先場所9月場所まで3場所連続休場というぐらいだから只事ではない。

現在の足の状態
治るメド・期間
メンタル・モチベーション

などなど、気掛かりだ。

オレンジ色の締め込みが似合うあの勇姿

旭川後援会から贈られた白くまの化粧回し
自身の披露宴で亡き母からの手紙の読み上げで号泣したエピソードなどが印象深い。

この苦しい経験を捲土重来の糧にしてほしい。

通算0勝1敗、珍名力士・育盛物語。

式秀部屋(しきひでべや)
茨城県龍ヶ崎市に元前頭9枚目・北桜が師匠を務めるこの部屋には、キラキラ四股名や珍名力士が多く所属していることでも、よく知られている。

その中の一人に残念ながら現役は引退してしまったが、目に頭に記憶に焼き付いて離れない珍名力士が土俵を去って8年以上の時間が過ぎたことを思い知らされた。

「育盛」(そだちざかり)

本名 田井雅人。

小学校から高校生の間に不登校を経験。

高校時代はソフトテニス部に所属していたらしい。

2014年7月場所の新弟子検査で合格基準の体重67㎏に4㎏足りず、おにぎり4個・うどん2杯を食べ、水3リットルをやっとの思いで飲み干し、どうにか検査をパスしたというエピソードの持ち主。

前相撲の2番はともに黒星に終わったが、驚くべきはその所要時間。

一番相撲が1秒二番相撲が2秒

と記録が残っている。

動画を見つけた。

見よ、この衝撃的な負けっぷりを⇊

取組直後のニヒルな笑みは何を意味する。

そして初土俵を迎えた翌9月場所初日の前日、式秀親方が引退届を提出し、受理されて、通算成績0勝1敗で土俵を去った。

育盛の父親曰く、「体力の限界だったということ。8月までは元気でやっていたが、9月になって疲れが一挙に出てしまったのか、体調を崩し、枚方の実家に一度戻り家族会議を重ねた結果、引退という結論になった」

70㎏あった体重が58㎏まで瘦せた。やはり、相応の心労があったのか。

最後は、家族に説得された形での引退になったようである。

その後、双極性障害という精神疾患を患い3度の入院。この病は2014年10月頃の発症らしいので、現役引退後の話になる。

https://www.youtube.com/watch?v=Yy50cMBP-QM
https://www.youtube.com/watch?v=geSXjrTgxPI&t=24s

2021年9月には大学を卒業。

アルバイトをしながら、将来の道を模索する現在だとか。

https://www.youtube.com/watch?v=IBRR1SV_E-Q

2ヶ月の力士生活であっても、新弟子検査・体重合格を目指した苦しい思い出や、珍名であるがゆえに、世間からの注目を浴びながら一瞬で吹き飛ばされた相撲、毎日の朝稽古の鍛錬も、それは厳しくつらいものであったろう。

そういった経験も、いずれ心の良薬・財産に変わる時がきっと来る。

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