消えた宮城野・雷鵬晋太郎

・幕内優勝回数
・横綱在位期間
・通算勝利数
・幕内勝利数
・全勝優勝回数

などなど、数多くの輝かしい記録を保持している前・宮城野親方こと白鵬 翔氏が残念にも相撲界を退職したのは周知の通り。
今後の活動については、これまで15回開催してきた少年相撲の白鵬杯を拡大し「世界相撲グランドスラム」を創設する、とのこと。

「円満」とはとても言い難い今回の退職劇だが、白鵬杯をステップにして新横綱・大の里や尊富士など、プロに転向した力士は少なくない。

世話になった角界とは袂を分かち、実績ある白鵬杯から更に有能な人材を送り込むという、外側から相撲界に貢献するという計画・心意気に対してエールを送りたい。
良くも悪くも(慣習や考え方が)狭く凝り固まった相撲協会に在職し続けるよりも、この方が自由にのびのびと白鵬らしく生きられるのではないか、変な制約や枠に囚われることなく。心機一転頑張ってほしい。

長い前置きになった。
5月夏場所限りで白鵬師匠の旧宮城野部屋勢から2名が引退している。

雷鵬と小野。

中でも雷鵬は大学卒業後、社会人(接骨院やいちご農家など)を経て異色のプロ入り。
中学時代から相撲を始め、学生日本一、軽量級の日本代表と輝かしい経歴があったそうだが、小柄な体格を理由にプロ入りを拒んでいた青年に白鵬直々にスカウトされ、入門へ。

炎鵬や川副などお手本となる小兵・軽量の力士は存在するも、最終的に成功・大成ならず。
去年初場所で左膝前十字靱帯の大ケガ。これが致命的になったようである。

最高位はおととし5月の東幕下43枚目。
勝った決まり手をたどってみたところ、内掛けや出し投げで勝ち星を稼ぐことが多かったようだ。やはり技巧に活路を見出したかったが、膝のケガが引退の引き金になったか。
宮城野部屋閉鎖以降、同部屋出身の引退力士は10人を数えている。
イケメン力士としても知られていた雷鵬であった↓↓↓


3人の杉野森

 今回の元横綱白鵬・宮城野親方が相撲協会を退職することになり、この空いた宮城野株を伊勢ヶ濱親方だった旭富士が襲名し(7月途中から参与として雇用)照ノ富士親方が伊勢ヶ濱を継承することになった。
白鵬としてみれば、何とも皮肉で且つ陰険な結末で相撲協会と袂を分かつ。

この両氏、本名で言えば(旭富士)杉野森から(照ノ富士)杉野森(照ノ富士は2021年8月に日本国籍を取得)へ、バトンが渡された形になる。
照ノ富士が「杉野森」を名乗った理由として(当時の親方・旭富士は)何にも代えられない存在だし、親方といろんなことを一緒に乗り越えてきたのもあり、親方から名字をいただいた、とあった。
正に今回の伊勢ヶ濱継承は、相撲の神様が予め準備していた使命なのかもしれない。

加えて現状の相撲界を司る杉野森姓はもう一人、元安美錦の安治川親方も忘れてならない。
代表力士は将来性豊かな安青錦を始めに、次場所で幕下上位昇進確実な安大翔など心血を注いで指導している。

さて、ここで出てきた「杉野森」姓とは・・・。
青森・福島・宮城・岩手の四県の太平洋側が陸奥起源とされ、近年では青森県津軽郡木造町や菊川に集中している、とあった。
旭富士はその木造町、安美錦は深浦町、共に西津軽郡出身である。

新伊勢ヶ濱親方は引き継いだ現有戦力(尊富士を筆頭に7名の関取衆、復帰を目論む炎鵬や川副他、有望力士多数)が所属していて、今後どんな「照ノ富士色」「照ノ富士式」を打ち出していくのか楽しみである。
一ファンとして言うならば、同じような体格の新弟子が入門し、育ってきたらあの外四つからの豪快な(かんぬきにされた瞬間、相手の戦意を瞬時に削ぎ落とすような)極め出しを伝授してほしい。

3人の杉野森とは、
相撲界、新師匠世代幕開けの一部である。

豪鬼神という式秀力士

 キラキラネームの宝庫・式秀部屋。
夏場所後には、33年の力士生活、一時期「桃智桜(ももちざくら)」という四股名を名乗っていた澤勇の引退に、場所前の所属力士の訃報などがあったりして、今年4月から5月にかけて残念な話題が駆け巡った。

そんな式秀部屋の相撲協会公式サイトを見渡せば、武隈部屋の力士達のように(親方・元豪栄道)の「豪」の字が使われた力士を発見!(いや、ホントに知りませんでした)

豪鬼神(ごうきしん)

という力士がいた。
詳しい四股名に込められた意味や願いはわからないが、格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズの登場人物になぞらえてるのか?その武隈軍団に牙をむくかのように、おととしの名古屋場所からこの豪鬼神と名乗る。

改名後、残念にも成績は振るわず神様はまだ降りてきてないようだ。
5月夏場所も、西序二段84枚目で1勝6敗と大きく負け越し、どこに目標を置くのか。

土俵歴8年超の今日(6月1日)でちょうど33歳。
しかし、個性派揃いの式秀になくてはならない存在であることは間違いない。



安青錦の対三役3連敗が持つ意味と価値

 安青錦 新大(安治川) 東前頭9枚目
今場所成績 11勝4敗

4敗の内訳
初日・金峰山(前頭)
10日目・若隆景(小結)
11日目・琴櫻(大関)
12日目・大栄翔(関脇) 

とまぁ(敗戦は)幕内1人と三役のみと確かな実績と素晴らしい実力を見せてくれた。

初日の金峰山戦は、大きな体に腕の長さを最大限に活かした突っ張りで中に入れなかった(金峰山の取った作戦・展開が有効だった)
10日目・11日目の若隆景・琴櫻戦はすんでのところまで追い詰めた上での悔しい負け。
12日目の相手となった大栄翔は、初日・金峰山の相撲展開と似ていて(途中のいなし以外は)突っ張りに徹した。

逆に勝った相撲をもう一度振り返ってみたが、概ね低い姿勢(頭をつけ続け)少々の揺さぶりにも動じないメンタルとフィジカルの強さ、対応力の多彩さ(時に足を取ったり掛けたり)などで白星を重ねてきた。

さて、来場所の番付予想としては、早くも(付け出しを除いた)新三役昇進の史上最速記録を達成するのではないかと予想する向き・識者が多い。

何事においても順風満帆にいくわけがないが、安青錦の今場所の対三役3連敗は、言葉だけではない上位陣の壁の厚さ、今後に向けての課題、欠点をを知る絶好の機会と捉えようか。

初土俵以来負け越し知らずで駆け上がってきたこの男の(本当の意味での)真価が問われる場所が訪れようとしている。

夏場所引退力士より

 今場所限りの引退力士は10人と発表された、一部抜粋。

聡ノ富士(伊勢ケ濱)
ご存知、弓取り式最多回数保持力士。
48歳まで相撲を取り続け、伊勢ヶ濱親方定年と共に引退を決断した。

澤勇(式秀)
前の桃智桜と言った方がピンとくるだろう。
珍名・キラキラネームの宝庫、式秀部屋からまた一人、人気力士が去る。

竜勢(伊勢ノ海)
父が元関脇・多賀竜。親子二代の関取ならず。最高位は幕下優勝直後の東幕下4枚目。

益湊(阿武松)
入門時の師匠は、元関脇・益荒雄。その元親方の付け人を務めた経歴あり。
小学生の頃から相撲教室「キッズ阿武松」に通っていた、阿武松一筋力士。