オヤジと息子 大碇と若碇、斎藤忠剛

ーオヤジー

 元幕内・大碇(現在の甲山親方)は、高校から大学とアマチュアを経験。
複数の全国大会出場などで確固たる実績を作り、大学の1年先輩であたる土佐ノ海所属の伊勢ノ海部屋に入門。突き押し相撲で活躍した。
最高位は東前頭11枚目。2004年11月場所限りで引退、年寄・甲山を襲名している。
NHKの相撲中継(BS)三段目上位から十両土俵入り前までの解説者としてはおなじみの顔である。
そんな甲山親方には3人の息子さんがいらっしゃって、長男は若碇、次男は初場所デビュー予定の斎藤忠剛、三男も中学生ながら自宅近くにある相撲道場で稽古に明け暮れてるという(いずれはプロになるのか)
ちなみに妻・直美さんを病気で亡くされてるとのこと(2014年・この時、若碇は小学3年生)とある。オヤジは苦労して3人の息子を育てたのであった。

ー息子ー

先場所(11月)で新十両だった長男・若碇(伊勢ノ海)

九州場所を振り返る。
ふたを開けてみて、これはキツいなと。
(6日目までが)1勝5敗(この1勝は不戦勝によるもの)で序盤は最悪とも言えるスタートだったが、その直後に5連勝として気を吐き、6勝5敗とした。残る4日間を1勝3敗で結局は7勝8敗で終わり勝ち越しには手が届かなかった。

(動画で)見直してみたが、序盤はやはり体重(パワー差)で星を落とした相撲がいくつかあったように思う。そのあとの5連勝はスピードを軸にきびきびとした動き、休まない攻めがうまく嚙み合った(理想的)最後の3敗は(実力者・新鋭に)やっぱりパワーでねじ伏せられたかなと。

今度の初場所の番付は、先場所のまま(据え置き)で東十両13枚目。
スピードと若さ、闘志あふれる相撲で活路を見いだしてもらいたい。

今度は次の初場所で次男斎藤忠剛が三段目付け出しでデビューするそうだ(兄・若碇と同じ伊勢ノ海部屋から)
「湊川親方(貴景勝)のような気合の入った相撲を取りたい」と早くも高い目標を掲げ意気込みを語っているそうで非常に今後が楽しみだ。

2024年の朝乃山、今年の漢字

そりゃそうだろう。

2021年
当時、大関に君臨していた朝乃山。

これから天下(横綱)を獲ろうという時に・・・。

自らコロナ緊急事態宣言中にガイドラインに触れる違反行為を起こしてしまい、事情聴取の際に「事実無根です」と答えていたが、弁護士の求めでスマートフォンを調べたところ、虚偽報告(=ウソ)が明らかになり「6場所の出場停止と50%の減給6ヶ月」と現役大関がしでかした行為に対し、かなり厳重な処分が科せられた。

三段目からの再スタートとなったが(負傷に関わることではなかったので)圧倒的な成績を残し、幕内上位まで番付を上げてきた頃に、今度は相次ぐケガに見舞われてしまう。
2023年(去年)の7月を皮切りに11月、今年(2024年)1月と5月(春巡業中の4月の怪我で全休)その次の7月名古屋場所では初日から3連勝するも、4日目・一山本戦で左膝靱帯の負傷(車椅子で退場する事態)が今でも響いており、新年の初場所(西幕下41枚目に番付)も休場する意向を固めたようだ。
本格的な稽古もまだ再開できていないとか。

そりゃあ泣きたくもなる。

朝乃山も30歳(来年3月に歳を重ねるそうだが)
自ら起こした不祥事を乗り越え、これからと言う時に今度は大ケガによる番付降下を味わっている。その悔しさ・やるせなさは本人にしかわからない。

「戦後、幕内経験者が三段目以下に2度転落後、再入幕した例はない」

とのネットニュースを見かけたが、この厳しい現実に対して、時間をかけながらどれだけ気持ちを掻き立て「笑」につなげることができるか。

つらい時間が続いている。

伯桜鵬、復活なるか

 伯桜鵬が幕内に帰ってくる。

去年9月の西前頭9枚目に番付されてから(この場所は肩のケガで全休だったが)そのあと(幕下1場所を含む)幕内復帰まで7場所を要した。

数々のアマチュアタイトル獲得後、鳴り物入りでのプロデビュー(2023年初場所・幕下15枚目付出)
本当に輝かしかったし(その実績通り)好成績を連発。猛スピードで番付を上げていった。
初土俵から4場所目での新入幕(去年7月)最後まで優勝争いに加わり、109年ぶりの新入幕優勝なるかと大いに話題になったのがつい昨日のことのように感じる。
その目前のところで優勝を逃した大一番・豊昇龍戦がこれ↓↓↓

上げ潮の流れが変わったのが、左肩関節亜脱臼によるケガ。
↑↑↑この一番でもテーピングで固定されていた。
元々中学生の頃からの古傷らしいが「復帰まで3ヶ月以上を要する見込み」との診断結果がなされ、翌9月・11月と2場所連続全休。連動して今度は番付を大きく下げていった。

現大関・大の里の初土俵は伯桜鵬より2場所あとの昨年5月。今年初場所に新入幕になったばかりだが、先場所11月には早くも大関にのぼり詰めた。
療養期間に番付が完全に逆転。残念ながら現在では大きく水をあけられてる。

かなり広範囲に施されていた左肩のテーピングもいつしか無くなり、力強さも戻りつつあるか。気が付けば頭の上には関取の象徴・大銀杏が結われていた。

挫折を知った「令和の怪物」は、再出発のこの場所でかつての輝きを取り戻し(ケガによって味わった)苦労や悔しさを爆発させる場所であってほしい。

幕下上位30代以上の力士達

 幕下15枚目以内とは・・・幕下優勝を7戦全勝で決めれば、ほぼ間違いなく一発で上がれる位置に番付されている。
あと、十両土俵入りのあとの5番は幕下上位5番と言われ、土俵上も更にライトアップ。格別感が伝わってくる(現地観戦・テレビ桟敷でも)

他にもこれは15枚目以内に限らず幕下以下全力士に言えることだが
給料が出るか(十両以上)出ないか(幕下以下)
髷(まげ)が大銀杏(十両以上)かちょんまげ(幕下以下)か
本場所土俵で博多織のカラフルな廻しを締められるか(十両以上)黒の木綿廻しのまま(幕下以下)か
などなど。

相撲取りとして一丁前に扱われるか(十両以上)扱われないか(幕下以下)
運命の分かれ目の階級とも言える(特にこの幕下15枚目以内)

2004年(平成16年)初場所から公傷制度も無くなり、全治数ヶ月の大ケガを負った関取(力士)は容赦なく番付降格の憂き目にあった。

それがゆえに、関取経験者や30歳以上の古参力士などが入り混じって番付されている。
(失礼だが)過去の栄光やスポットライトを浴びるその気持ち
俺はまだやれるんだという自尊心的なものがあるのは当然の事だと思う。

長い前置きになったが、初場所新番付の幕下上位15枚目以内に4名の30代力士を見つけた。簡単に紹介。

東2枚目 荒篤山(荒汐) 最高位・西前頭16枚目(2022年3月場所)
中学卒業後の入門で土俵歴15年と本物のベテラン。
長い下積みを経た末に関取昇進も在位は幕内も含めて10場所(途中、幕下陥落1場所あり)
昨年5月から幕下に低迷中。再び栄光を掴み取れるか。30歳。

西2枚目 天空海(立浪) 最高位・西前頭10枚目(2022年初場所)
高校時代に柔道で活躍。同郷・稀勢の里の活躍に刺激を受け立浪部屋に入門。
2016年に関取昇進のチャンス到来も膝の怪我により遠回りを余儀なくされた。
今年5月に幕下転落。捲土重来なるか。34歳。

東7枚目 栃丸(春日野)最高位・西十両11枚目(2022年7月場所)
「高速突っ張り」「突き押し一筋」と言ったらこの男しかいない。
師匠・春日野曰く「天才でもないし、何か光るものがあってわけでもない」の言葉が示す通り、努力でここまで這い上がってきた。両膝の手術から復帰後の今年春場所以降は(番付を大きく下げたこともあり)一足飛びに再浮上してきた。今度の初場所は再十両への足固めとしたい。32歳。

東10枚目 千代丸 (九重)最高位・東前頭5枚目(2018年3月場所)
実弟は元・千代鳳(現在の年寄・大山)鹿児島県志布志市出身。
そのキャラクターを買われてかバラエティー番組にも度々出演。
先場所(11月)に3場所ぶりに十両復帰も1勝14敗と大きく負け越し。番付も大きく落とし、また幕下からの出直し。幕内在位31場所。33歳。

偶然だが4人とも関取経験者。土俵経験豊富。
その経験と実績で自分より下の年代力士達をねじ伏せるのか。
世代交代を突き付けられるのか、味合わされるのか。
このあたりも注目していきたい。

玉正鳳、苦労が実った新入幕

 ようやく決めてくれた。
いつまでも待つつもりだったが。

初土俵から関取(十両)まで11年超。
十両在位連続11場所。
幕内最年長・玉鷲の義弟
デビューから所要79場所と外国出身力士で最も遅い新入幕となった
玉正鳳萬平(片男波)31歳9ヶ月

来日当初に入門した(登録上の所属力士が0人となったため閉鎖に至った)高島部屋を含めると4度の部屋移籍。
高島→春日山→追手風→中川→片男波
幕下と三段目の往復3回。
改名歴3回(4種類)
高春日→種子島→旭蒼天→玉正鳳

本当に苦労に苦労を重ねてきた。

右四つを軸に上手投げや叩き込みで勝ちに繋げるのが多いかな。
ステージを幕内に上げてどう立ち向かうのか。
軽量の悲哀を味わうこともあるだろうが、柔軟な下半身からの逆転勝利と諦めない勝負根性を加味してどれだけ白星を積み重ねられるか。

2022年の名古屋で7番相撲を不戦敗しているが、これはコロナ感染者と濃厚接触した可能性があるためで公式記録に休場はない(このあたりのケガをしにくい体質も義兄・玉鷲を受け継いでるようだ)

第51代横綱・玉の海(先月亡くなったあの北の富士氏の好敵手)を輩出した名門・片男波部屋もこの玉正鳳と玉鷲に序二段力士2人の合わせて4名だけの所属という有様。

新入幕で迎える初場所は自身の存在アピールに加え、この「片男波部屋」の名前も再び世に知らしめることも、玉正鳳の役割であり使命のような気もする。